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同時に、ここ数年で中国の軍民融合が格段に進化している現実に日本の大学が無頓着であることもある。人民解放軍と一体になって研究開発している中国の大学、研究機関は多い。研究者自身にその意図がなくても、中国の軍事力に貢献していることも十分あり得る。欧米、豪州などでは警戒感が高まって対策を講じている。
米国のアカデミアは自ら自律的に提言している。米国の公的資金を受けながら、中国から資金供与を受けるのは利益相反になり得るので、「リサーチ・インテグリティ」に反するとして情報開示を求めている。米国ではこうした提言を受けて開示義務が課されている。
ひるがえって日本のアカデミアからはこうした動きは見当たらず、実態を知らないことからくる被害者意識だけだ。
機微な技術の中国への技術流出に無頓着でいて、米国の大学などとの共同研究のパートナーからも外されてからでは手遅れだ。
こうした実態を中央公論2月号に寄稿しました。「大学はなぜ経済安保を直視しないのか」ご参考まで
>引用
『海外から研究者を集める中国の人材招致プロジェクト「千人計画」を念頭に、文部科学省は2021年度から、「科学研究費助成事業(科研費)」について、申請者が外国の研究資金を受けている場合は申告するよう義務づけた。研究の透明性を高めるとともに、研究者の海外活動の把握を進めるのが狙いだ』
「文部科学省は2021年度から、「科学研究費助成事業(科研費)」について、申請者が外国の研究資金を受けている場合は申告するよう義務づけた。」
ご参考
https://newspicks.com/news/5567484
「この程度で大丈夫なのか?」
という疑問を抱きますが、法整備がなされていない以上、現時点ではやむを得ません。
安全保障を目的とする情報や頭脳流出を制限する包括的な法整備が必要だと思います。
科研費申請書に関し、2021年度からは「海外からの研究資金の記載を義務化した」とのことですが、これを記載したところで、同領域の研究者から研究の価値を高く評価されている申請者が当選する傾向は変わらないと想定できるだけでなく、仮に海外から資金を受けていることがマイナスに影響するのであれば、国際共同研究が活発に行われる自然科学系統の研究者に「失格者」が出やすいでしょうし、「現に政府の顧問・委員等の立場にある有力研究者」が相当な影響を受けることが想定できます。一部の日本学術会議会員と政府の対立は、その対象は「文系」でしたから、政府がこのようなことを誘導するでしょうか?
以上のことから、「中国の人材招致プロジェクトに関係している学者を『失格』させるために獲得した海外研究費の申告義務を課した」との新聞社の分析には疑問を感じます。
国家等の機密を知り得る方が国内外問わず情報漏洩をすることは、学術活動とは関係のない非違行為であり、ここに法の制裁は必要と考えます。しかし、科研費が対象とする研究は、成果を論文として世界中に公表し、世界共通の財産とするものであり、いわゆる国家機密として国家が利用するために成果を得るものとは性格が異なります。また、どこから研究費を得ているかとの情報を公開することは研究倫理上求められていることも付記させていただきます。
「技術流出の懸念などを受け、政府は今年中に指針を設け、公的助成を受ける研究者に対し、外国資金の受け入れや海外での活動などについて原則開示を求める方針を固めている。国内最大の研究費である科研費について、文科省が一足早く対策を取り入れた形だ」
海外からだけでなく、一定額以上の研究資金については、透明性を確保することが、これから世界と戦う上で、とても重要だと感じました。
※個人的な見解であり、所属する会社、組織とは全く関係ありません