広がる「上場は後回し」 成長優先、ユニコーン狙う
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ファクトベースで言えば、未上場で多額の調達をしてミッドキャップでIPOするなら、当然オファリングは公募よりも売り出しが多いため、初値の株価下げ圧力が大きくなります。要は果実をプライマリーの投資家が取るのか、セカンダリーの投資家が取るのかの違いです。
SaaSと一括りに言っても参入市場によって事業特性は大きく違い、スマートHRなどの人事総務系は売上が伸長しても、付加価値率が横ばいであり規模が利かず、スイッチングコストが低いですが、比較的立ち上がりから利益が出やすいです。バリュエーションがPERで議論しやすく、後からのIPOでも可能です。
一方で会計系のフリーやマネーフォワードなどは、スイッチングコストが高いため、導入マーケティングに多額のコストかけて課金ユーザーを獲得しに行くので、立ち上がりの投資は莫大になります。そのため、未上場時の資金調達において、事業戦略について来られる投資家がいるか否かが、IPOを考える時期に影響を与えます。
但し、会計系のSaaSはあるタイミグ(知名度)から、CACが下がり、規模が効いて付加価値率が大幅に上昇、規模が効くため、足許の業績が大赤字でもDCFでは大きなバリュエーションを出すことが出来ました。
実際に2019/12に930億円でIPOしましたが、現在のキャップは5000億円となっています。
要は今が赤字でも参入市場とビジネスモデルがその市場での勝ちパターンであるなら、足許赤字でも大きく伸長する良いケースであり、やはり事業特性分析は重要です。
注目のコメント
この記事で注意が必要なのは、未上場でも、上場後でも100億円以上の調達が出来るスタートアップは一握りだ、という点。
SmartHRもBASEもそうしたひと握りの会社だがそうではない会社が99%。
ビジネスモデル、市場、経営陣、達成力、投資家との高い対話力
その上で「社会的な追い風」など条件が掛け算(一つ欠けると全体がゼロになる)で多数揃わないと成立しない。総じて良い傾向でしょう。
諸外国のスタートアップ資金調達環境に日本も近づきつつあるという事、米国では2014年に未上場資金調達がIPOによるそれを抜いておりその後は一昨年来のIPOブーム後も継続している。
日本もそうなりつつあるという事だが、一方で引き続き早期IPOを狙う会社もあり、というか実際はそのほうが数としては未だ多く、世界もそうであるように2極化が進んでいる。すなわち後者のグループは
「マザーズ上場企業の初値時価総額の中央値は、20年は149億円と16年比で9割大きい」
とある通り、2倍近くになったとて引き続き諸外国で言うところのシリーズCくらいの規模感。かつそれでも利益の150倍(マザーズ平均PER)も付いてもその程度。いかに早熟量産型の世界稀に見る市場であるかという証左でもある。昨年のIPOマーケットの様子を見て、「上がれる時に上がっておこう」といった機運も高まっているように見受けますし、IPOタイミングについての見方が分かれているのが実態じゃないでしょうか。
資金調達環境の未整備などにより、上場後のスタートアップの成長が持続しづらい点が日本のスタートアップを取り巻く課題点だと、かねてから指摘しています。
この点、記事中のBASEのように、2020年は主に海外ABBを通じたマザーズ上場企業の資金調達の事例が増えてきた一年でした。
一方で現状、こうした事例は規模感のある企業に限られた話でもあります。上場後の資金調達を実現するためにも、一定規模以上でIPOすること、あるいは上場後に着実に評価が上がると見込めることが必要でしょう。
「上場は後回し」と経営者が思ったところで、レイトステージでの資金の出し手や、セカンダリーの受け皿がないことには実現しようがありません。
この点は私も1プレイヤーとしてエコシステム発展に貢献できればと思っています。
日本にスタートアップ・エコシステムを構築するために
https://newspicks.com/news/2885202/
【シニフィアン 朝倉】レイトステージの資金調達機会の多様化が際立った2020年
https://newspicks.com/news/5512244/