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アフリカで携帯はどの程度普及しているの?通信環境は?

(2023年10月追記)この記事で取り上げている情報を更新し、2023年時点の最新情報を以下にまとめました。現時点での決定版です。以下からご覧ください。


コロナ禍以降、アフリカでも、オンラインや遠隔サービスの成長が期待されています。そのインフラとなる「携帯電話」の普及率や通信環境について、基礎的な情報をまとめてみたいと思います。

ちなみにサムネイルは、ノキアのフィーチャーフォンを持つ人が私のFacebookページを見ているところ。この写真を撮ったのは2012年頃のケニアでしたが、いまではアフリカでもこういう携帯を持っている人は(ノキアという意味でも、フィーチャーフォンという意味でも)かなり減りました。


アフリカの携帯普及率とスマホの普及

直近では、販売台数でみると、四半期ごとに5,000万~6,000万台程度、年間では2019年で2.2億台の携帯が売れており、スマートフォンがその半数に近づいています。

アフリカにおける携帯電話販売台数(百万台)

スマホ普及率

出所: IDC資料からABP作成

携帯電話の普及率となると、一人で複数のSIMカードを持つのが一般的であることや、地方では家族などで1台を共有することもあるので算出しづらいですが、2019年時点で4.8億人が携帯を使っているとされています(GSMA)。アフリカ大陸の人口12.7億人のうち、アフリカは人口の半分以上が未成年ですから、ざっくり20歳以上を6億人とすると、80%の保有率といえます。

感覚的には、都市部の携帯普及率は100%に近く、大半はスマホであるといってよいように思います。農村に行っても、40代以上はフィチャーフォンが目立ちますが(アフリカでは40代以上は年寄りです)、若い人はもうスマホです。だってスマホがないと、友達とWhatapp(LINEのようなメッセージ系アプリ)ができないし、YouTubeも見られないですからね。

この40代というのはひとつの分かれ目の年代です。これより上の世代は、初等教育が無償化される以前で識字率が低かったり、年齢を経てからインターネットに触れた世代です。携帯やインターネットを使うって、字を読むことなんですよね。いまでは農村でも就学率は高いですし、20代は生まれたときからインターネットを使っている世代となりました。

スマホ端末は、30~50ドルの低価格スマホを買うのが一般的である国もあれば、6割の人が100ドル以上のスマホを持っている国もありますが、均すと、スマホの3割が80ドル以下、3割が80-120ドル、残りの1割が120ドル以上とされています。

ちなみにOSはアンドロイドが圧倒的に優勢です。とはいえ、iPhoneは人気はあり、Appleはアフリカのブランド調査でも6位に入るほどです。正規のものも、中古も売られており、使っている人もそれほど珍しくはありません。

なお、上のグラフをみると、コロナ感染以降、とくにフィーチャーフォンで販売台数が落ち込んでいますね。その後、第3四半期(7月~9月)になって、数は戻りつつあります。

アフリカの携帯端末メーカーシェア

昔はノキアが強かった。まさにサムネイルのようなタイプの携帯です。その次にアフリカ市場を席巻したのはサムスンです。しかしいまでは、アフリカで最大のシェアを持つ携帯端末メーカーは、中国のトランシオン(Transsion)です。

アフリカのスマートフォン販売台数シェア

メーカー別

出所: IDC資料からABP作成

同じ中国メーカーのファーウエイもシャオミも蹴散らし、ぶっちぎりですね。金額でみても、直近でトランシオンが30.1%、サムスンが27.8%となっており、トップシェアです。

追記: 番外編として、南ア、エジプト、ナイジェリア、EAC(ケニア、ウガンダ、タンザニア)それぞれのメーカーシェアについてもとりあげました。


トランシオンは、Tecno、iTel、Infinixという3つのブランドを持っています。もともと強かったのは、Tecnoブランドのフィーチャーフォンでした。

こういうのです。

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おじさん、自撮りでしょうか。渋いです。

トランシオンは、この携帯を、アフリカの地方や農村といった一般の端末メーカーがカバーできていなかったエリアまで、足を使った営業で拡販していきました。

いや、他の端末メーカーは、農村部では携帯ニーズは高くないと思っていたのかもしれません。ところが売ってみると、農村でも、40代以上の世代でも、携帯は売れました。

農村部まで売りに来てくれ、近所で買うことができるというのは、農村の人たちにとってはそれだけで利点です。

アフリカに特化する逆張り携帯メーカー、中国トランシオン

スマホの販売台数・金額ともにシェアトップのトランシオン、これがフィーチャーフォンの販売台数シェアとなると77%を占めており、さらに強いです。一般的に端末メーカーは商売が集中している都市部から販売を開始しますが、トランシオンは逆張りして、農村のフィーチャーフォンから開始したのです。

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地平が歪んでてなんかすみません。ちなみに、記事中の写真はすべて、私が撮ったものです(謝)

そしてなにより、トランシオンの端末が好まれる理由は、「電池が長持ちすること」です。

農村だと電力供給が不安定なところもまだ多く、電気のある家や充電屋さんまででかけていって充電するなど、携帯の充電はひと仕事なのです。

機能を抑え、電池が長持ちすることにフォーカスした端末は、よく売れました。

農村で販売台数を稼ぎ事業規模を拡大したトランシオンは、いまでは、上のグラフでみたように、スマホでも4割のシェアを獲得するまでになりました。トランシオンのスマホ端末、たとえばInfinixブランドの最新のスマホでこんな感じです。

私はTecnoブランドのスマホを持っており、価格は106ドルほどでした。トランシオンのスマホの売上躍進には、eコマースが大きく関わっているといわれますが、これについてはまたeコマースについて記事を書くときに説明したいと思います。

トランシオンは中国・深センで設立されました。中国で携帯電話を売った後にアフリカ進出したのではなく、創業当初から主戦場はアフリカです。

こういう、ナチュラルボーン・アフリカファースト企業というのが、中国企業にはけっこうあります。中国市場ほど競争が過密でなく、タイムマシーン経営が成り立つということで、アフリカを目指して起業する人がいるためです。

2019年になってトランシオンは、香港のスター市場に上場しました。今後は、すでに製造を行っている中国とエチオピアに加えて、インドとエジプトで製造工場を設立することを発表しています。

ちなみに、トランシオン端末の強みである「電池が長持ち」をさらに極めた携帯ブランドも存在しています。パワーバンクフォンと呼ばれる、携帯そのものがパワーバンクとなっている端末で、中国広州のメーカーX-TIGIがアフリカのいくつかの国で販売しています。

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すごく分厚くて、かっこうはよくないですね。使っているのは、「携帯なんてつながりゃいいんじゃ」という感じのおじちゃんおばちゃんが多いですが、電池は1週間は余裕で持つそうです。

トランシオンのInfinixと並んで看板がでていますね。こちらの写真はコートジボワールの地方で撮ったものです。

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アフリカの通信環境と使用アプリ

アフリカの通信環境について、カバレッジ率は、3Gで7割、4Gで5割とされています。ただし人々の実際の接続状況は、4Gが10%ほどで、残りの90%を2Gと3Gがほぼ同率で分けています(GSMA)。

つまり、スマホを持っていても、4Gにつないでいない人が多いということです。SIMカードを無料で2/3Gから4Gへとアップグレードできたりするのですが、していない人がほとんどです。これは、鶏が先か卵が先かわかりませんが、人々のスマホの使用がメッセージ系アプリに偏っていることとも関係しているかもしれません。

メッセージ系アプリでは、人々の可処分時間の占有率という意味で、WhatsAppがダントツに強いです。WhatsAppはLINEに似たアプリで、フェイスブックが2014年に買収しています。SNSとしてFacebookやInstagramも使われていますが、Whatsappが1時間に複数回チェックされるとしたら、Facebook/Instagramは1日1回といった具合でしょう。

以前、どのようなアプリが使われているかという調査をアフリカ5カ国で実施したのですが、ゲームアプリやニュースアプリ、さらにはバイブル(聖書)アプリやファッション系のアプリ(髪型やファッションのカタログやHow toもの)などもよく使われていました。

下の写真は、ナイジェリア最大の都市ラゴスに住む、30代既婚女性のスマホ画面です。スマホはTecno。彼女は日常生活で家賃や公共料金をオンラインバンキングで支払い、eコマースで家電を買うこともありますが、生活水準を上中下で表すならば下の上となります。

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How to ものがけっこう多いですよね。なにをインターネットで検索するかという調査でも、ニュースに並んで、健康(糖尿病にならない食事は?熱がでたときの対処法は?など)や子育て、美容、料理などHow toがよく検索されているように思います。

あとは農業情報ですね。天候や作物価格、肥料の情報などです。「今年の雨季はいつから?」など、天気予報は意外とよく見られているようです。

アフリカにおける5G化への動き

まだ2G/3Gが使われているアフリカでも、IoT化を睨んで5Gの導入が俎上に上がっています。南アではすでに昨年、コロナが後押ししたこともあって、商用の5G通信が開始されました。MTNはエリクソン、Vodacomはノキアをベンダーに選んでいます。

以下は、5Gにおいてアフリカの通信会社に選択されたベンダーの一覧です。すでに決定が発表されている分のみアップしました。

アフリカ5G化におけるベンダー(2020年12月時点)

5Gベンダー

出所: 各社発表資料からABP作成

5Gといえば、米国の規制を受けて、アフリカの通信会社はファーウエイを使うのかというのが、注目されています。ファーウエイは通信機器やセキュリティ製品でアフリカ各国に入り込んでいます。

すでにファーウエイを使うと決めて、実証実験も終えたのが、ケニア最大の通信会社であるサファリコムです。ところが同社は年末に突然、開始間近だった5Gのサービスを一時的にストップすると発表しました。ファーウエイがらみではないかと噂されています。

このニュースとその解説は、当社が毎週発行しているアフリカビジネスに関するニュースレター、「週刊アフリカビジネス」の来る1月11日号で掲載する予定です。

週刊アフリカビジネスとは?誰が購読しているの?については以下をご覧ください。


テンセントやファーウエイなど、中国企業ばかりとりあげましたが、世界のGAFAはアフリカに関心がないのでしょうか。

いいえ、そんなことはありません。海底ケーブル引いたり気球飛ばしたり、発電したり、根っこのところから動いています。こちらをご覧ください。


スマホの普及率や端末のシェア、使われているアプリなどは、国によって違いがあります。アフリカへの進出を検討している、ICTや通信をベースにしたサービスを検討しているなど、詳細な情報が必要なときは、こちらからお問い合わせください。


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