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激動の1年間に何が起こったのかを振り返った上で、2021年はどんな年になるかを予想しました。荒唐無稽な予測というよりも、全国的にほぼ確実に起こる課題に対して、解決のポイントをまとめた記事としています。2020年に大きく動いた変革の波を絶やさず、もっと良い教育の実現につなげていく上で、一助となれば幸いです。
最後になりましたが、2020年の激動の中で、子どもたちのために奔走してくださった学校関係者が全国にいたことは忘れてはいけません。関係者の皆様、本当にありがとうございます。
理由はいくつかあります。
まず管理する人がいないということです。各学校にはIT担当教員がいますが、この担当者は普通に6時間目まで授業をやり、その後部活に行き、保護者対応をしています(この時点でとっくに勤務時間を過ぎています)。そのあとさらに学校のIT機器の管理などできるはずがありませんし、その知識もない。彼らはシステムエンジニアなどではなく、教育大学を出た数学や理科の教員であることがほとんどです。
次に設備が整っていないです。教室にはモニターがなく、WIFIも届いていません。授業でIT機器を使おうと思ったら毎回スクリーンを黒板に貼り、プロジェクターを設置しなければなりません。そもそも生徒全員分のタブレットがありません。BYOD(Bring your own device)で生徒自身のスマホを使用させようとしても、アンドロイドとiPhoneの違いでアプリに不具合が出たりしますし、月末でパケ死してる生徒がいれば成り立ちません。保護者は授業で使わせるなら学校が通信料を払えと言ってきます。
人にもモノにも予算をかけず、タブレットだけ学校に送り付ける、現在のGIGAスクールはこんな状況です。私は黒板とチョークのみで授業をしています。
国・地方自治体は教育に予算をしっかりとつけて欲しい。Go toは予算数兆円、GIGAスクールは2000億円。10分の1以下です。ここが変わらないとDXも進まないし、人材も増えない。失われた30年はさらに続くでしょう。
教育を受けた、ということは、誰からも信用のできる証明である必要があります。たとえば、同じ医学部卒でも、大都会大学の医学部卒と山奥大学の医学部卒では、プロ野球選手と少年野球くらいレベルが違う、となれば、もはや同じ医学部とはいえず、医者と名乗ってもそれだけでは信用されなくなります。
教育に差をつけることは簡単です。全国どこでも標準化された教育が受けられるようにすることこそ至難の業です。「教育のIT化」は質の高い教育へのアクセスを、誰にでも可能にする、という言説がかつてありました。2020年は、それが事実ではない、ということを赤裸々にしました。
オンラインに移行できた私立の小中高の学校に対して、公立は非常にできることが限られていた、という違いがありました。そして、それ以上にオンライン授業といっても、その中身は学校によってまるで違う、ということが大学で見られました。
圧倒的に突出していたのは結局東京大学で、オンライン授業というより、clusterを使った複合現実感システムによるVR授業、というのを確立しています。
ヴァーチャルなキャンパスの空間を構築していて、そこで授業や卒業式、学会などのイベントができるようになっています。
https://cluster.mu/u/UTokyoOC
一方、日本に700以上ある大学では、オンライン授業といってもメールでプリントを送って、いくつかの問題への回答を返信させて終わり、というのが大部分、というところもあります。
「パソコンが使える」というのは、単に所有しているということではなく、「パソコンを使いこなす」というのが何を意味するのかとなると、飛ぶといってもバッタとハヤブサでは全然違う、というくらいに幅のある話です。
「パソコンが使えなければ教育が受けられない」という社会になれば、バッタ程度だけ飛べる人が大部分、ごく一部はハヤブサのように飛べる、という社会になりかねません。もちろん、そうならないためのシステムを構築することは可能ですが、とにかくパソコンを配って終わり、ということではないでしょう。
今回のことで表出したのは、自治体の首長の教育への姿勢。アンテナが高い首長は早急に対応。今のままで何が問題なのか?と考えていた首長の自治体は整備がギリギリ。
どのよな首長でもその人を選んだのは、その自治体の有権者。
選挙では皆教育を掲げますが、本当に議会で予算通してますか?
それを有権者は確認する必要があります。
急に学校に行けなくなった時期は、既にオンラインで授業ができる学校と、全く何も開催できないから一日中家にいるだけとなってしまった学校と多々格差がうまれてしまいましたが、学校関係者の方々は急な変更に対応させるために大変な毎日であったことと思います。その後もリカバリーのために、週末の登校数を増やしなんとか一年のカリキュラムを終えてくださいました。
家にはまた登校できなくなったときのために端末が配布されました。環境は整いつつありますが、これから2021年はこの環境をどのように活用し、教育のためのコンテンツが豊富に作られるかがポイントだと思います。
教育コンテンツのデジタル化、そして先生が活用して教える技術を高める等、2020年に急に加速した流れを止めることなくさらに2021年においても、前へ前へ進めていきたいですね。
>課題は「配備」から「活用」、「ハード」から「ソフト」に移る
さてGIGAスクール構想で一人一台が実現することは大きな変化ですが、讃井さんが指摘されているように今後活用にフォーカスが移ります。そして活用フェーズに入ってから、初めて具体的な課題が浮き彫りになります。
大きなポイントは2つで、コストと意識です。
PC配備はいわばイニシャルコストの頭でしかありません。これから必要となるものとして、以下のものが思い浮かびます。
①Wifi整備
各教室で40人が同時に使えるレベルのネットワークが必要になります。かなりのネットワークの太さが必要であり、かつ毎年かかる費用になるので、これだけでも費用負担は大きいです。
②ソフトウェア費用
学校活用では一律に同じソフトを入れる必要があります。複数のソフトウェア費用を積み上げると、年間使用料もかなり高くなります。これらを学年費などで家庭負担にすると想定すると、積極的に入れられるソフトの数が限られ、活用がミニマムになっていきます。
③修理、更新費用
一定の故障は生じるので、そのコストをどうするかも大きな課題です(Apple Careをイメージすると分かりやすいですね)またGIGAスクールで配備された後、PCの更新はどうなっていくでしょうか。今の端末のスピード感であると、数年で更新が必要になりますが、それはどのように費用捻出するか。
また教員側の意識も課題です。苦手意識のある教員が多く、かつ年代的に管理職に多いために「出来ることならこれまでのやり方で…」という発想になりがちです。一斉休校の際にも若手の教員がYoutubeの活用など出来ることをやろうと管理職に提案しても、「様々なリスクがあるから」と却下された例をいくつも聞きました。ICTに詳しくないと、調べもせずにリスクを言い出す人は教員に限らず多いように思います。ここをどう乗り越えるか。ここからの1年こそが日本の教育の未来を左右しそうです。
電子教科書などのデジタルデバイスが教育において利用しやすくなっている今、
アイトラッキングによって各生徒の注目や興味関心がどこに集まっているか、
問題を解くときにどのような頭の使い方をしているのか、どこでつまづいているのかなどの情報はある程度記録できると言われています。
その上で個別に最適なフォーマットで自動でフィードバックする仕組みを作ることも可能になりつつありますよね。
なんとかこういった教育の質の向上をコロナ下で実現できるといいですよね。。。!
”しかし、外部人材が学校に関わりやすくなるため、教育CIOなど新しい役職の創設、教員免許制度の改定や義務教育国庫負担金のより柔軟な運用など、学校をとりまく仕組み自体を見直すべきタイミングです。”
ここにない価値軸として重要なことを2つ補足すると、端末の活用には「適切な運用管理」が不可欠であり、これは文中にある教育CIO的な役割の人が自治体にいたり、学校に入り込んでサポートする人財が立ち上げ期には特に重要であることを示しています。
もう一つは「学習者の声、保護者の声を、ちゃんと聞く」。コロナ禍においてプリントだけ、しかもそれを学校に取りに行かされるみたいな経験やした保護者がいたこと、それにより学びに大幅な制約を受けた子供達がいたことを踏まえ、ICTについては学校現場よりある意味理解が進んでいる保護者や(場合によっては)児童生徒の声を気をつけて聞くようにしないといけません。教員とか業界関係者など「大人だけの声」が重要ではないことは要注意。