EUと中国、投資協定で合意 経済関係均衡化に期待
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注目のコメント
中国はいったん合意することが戦略的に必要と判断すると、譲歩のカードを切ってくるのは、RCEPと同じ。長く交渉していても、ここが勝負所と見定めた結果。(しかもその譲歩も致命傷にならないように、留保や逃げを打てるように巧妙にしている。今回の強制労働に関する、ILOの批准努力もその一例)。
同盟国との連携を謳うバイデン政権が発足する前に、是が非でも合意しておきたかった。
一方、欧州も欧州経済全体の低迷もあるが、さらにドイツが議長国である今年のうちに、ドイツはこの成果が欲しかった。VWをはじめドイツの自動車産業にとって、中国市場をいかに抑えるかが至上命題。
ただ欧州も一枚岩ではないので、批准も容易ではない。
ここでもRCEPの合意が効いている。対中国市場で日本に劣後するのではないか、との産業界の懸念も背景に。
同盟国との連携を打ち出し、米欧関係の修復を図ろうとするバイデン政権の出鼻をくじくことになったのは事実。中国市場の外資開放が進む流れとのことで、詳細をフォローしていきたい(中国内でも話題になっている)
3点ほど、少し俯瞰した視点での関連情報を(再掲中心ですが)再整理してコメント
補足①: 中国の市場開放
超長期×全産業にて俯瞰すると、各産業は不可逆的に、
確実に開放が進んできている
【FDI制限指数(外資制限の1つの指標)の例】
・全産業平均で中国もOECD平均にこの10年で急速に接近
・現状で差がまだ大きいのはメディア・通信・漁業
・金融は‘17〜’18年頃から開放が一気に加速した
(マジョリティ/独資の承認へ)
・電力・不動産・流通・製造業はOECD平均と同程度
もしくはそれ以上に開放されている
→ 本協定に広告や通信クラウドが入っているのは、まだ
差が大きかった領域を大きく前進させることになるか
※ とは言え、表面上開放されていても、運用上で大小様々な制約条件を加えられることもあり注意は必要ですが
補足②: グローバルの対中進出/対中投資
Decouplingにより激減中とのイメージ持ちがちですが、
実は寧ろ逆(!):
・’20/1〜7の海外からの対中投資は前年比+15%超の増加
・しかも米国からの投資が依然として最大
・中国国内株式の外国投資家持株比率も上昇し、外資証券
のマジョリティ・独資進出も相次ぐ(米国も積極的)
→ イメージに流されず冷静な判断が必要(自戒も込め)
補足③: 「経済圏GDP」という見方
先日「GDPで中国が米国を2028年に抜く」という報告書
についてのニュースがあったが、個人的には、
「経済圏GDP」において、更に早く中国が米国を抜く
という方がインパクトあると見る
ここで言う「経済圏GDP」は、米/中それぞれを最大の貿易国とする国のGDPの合計値と定義としてみたもの。まさにグローバルでの経済的なパワーバランス
→ 本件のケースも、まさにこうした経済圏GDPとしての
米国の優位性が効きにくくなって来ている象徴か私の注目点は中日韓のFTA、さらに日本主導のTPP11に中国を入れるか。
現況から見て、EUとの投資協定ができたし、日本とはRCEPでFTAがある程度できているので、中日韓のFTAの意味はそれほど重要ではなくなる。
国民の9割が中国を親しく思わない日本とは、ほんとうに意思疎通ができるか。中国国民の5割近く日本に好感を持っているなかで、互いに好感度には温度差もあまりにも開いている。はたして2021年も中国はいままでのように日本に期待をかけるか、非常に不明瞭となっている。
もし中国はこれから5年、10年に経済などがますます厳しくなり、失われていくなら、日本の対中世論は先見性をもっており、対中批判も非常によかったが、そうでない場合、日本経済にとってどんな影響を与えるか、心配となる。
もちろん経済がすべてではない。
日本世論はこんなに中国嫌うにはそれなりの理由もあるだろうが。