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44年ぶりの月サンプルリターンの成功、それだけでもすごいニュースなのですが、このニュースは中国の宇宙開発における目を見張る躍進の象徴的な出来事でもあります。
嫦娥5号はアポロと同様の月軌道ランデブー方式を採用しました。つまり、複数台の宇宙船による複雑なミッションとなりました。
軌道船と着陸船が一緒に月に行ったのち、着陸船のみが月面へ。その上昇ステージのみが月軌道に戻って軌道船とランデブー・ドッキング。サンプルを軌道船に受け渡し、軌道船が地球へ帰還、という手順です。
非常に技術的に難しい(かつ日本がまだ行なっていない)要素が多数ありました。列挙すると、
1. 月面への着陸
2. 掘削、サンプル採取
3. 月面からの打ち上げ
4. 月軌道でのランデブー・ドッキング
5. 月軌道からの直接帰還(しかもアポロのように一度高度を上げたのち再突入する大気圏スキップ飛行)
1はこれまでも実績あり。5はあらかじめ技術実証ミッションを飛ばしていたみたいです。2, 3, 4は今回が初です。それを全て一発成功。もう、唸るほかありません。
中国はこのような国営宇宙開発だけではなく、民間も非常に元気がいいです。しかし、中国の宇宙開発は一朝一夕に始まったものではなく、実はかなり長い歴史があります。
その礎を築いたのが、中国の「ロケットの父」と呼ばれる銭学森。実は彼、僕が今勤めているNASAジェット推進研究所の共同設立者でもあります。しかしなかなか時代に翻弄された人で、レッドバージにあい、共産党シンパだと無根拠な疑いをかけた末に中国に送還、そしたら中国で核ミサイルと長征ロケットを作ってしまった。アメリカにとっては本当に愚かなものをしたものです。
字数が収まらないので、続きはここに書きました:
https://uchu-no-hanashi.hiroono.com/father-of-chinese-rocketry/
追記 りゅうせきさん、誤字の指摘、ありがとうございます。
日本のはやぶさについては中国ではかなり大きく取り上げ、日本より関心度が高い。日本の宇宙技術は高く評価されている。
一方の米国の有人月面探査計画であるアルテミス・プランが加速されるのかどうかはバイデン新政権がどのような対中認識でいるかにかかっています。バイデン新政権が出だしを間違えると、中国が一気に優位の確立に動くかもしれません。
中国は月探査では13年に月面着陸に成功し、19年に世界で初めて月の裏側に着陸。今回のサンプルリターン成功をテコに、月面基地建設や有人探査、レアアース等の資源開発を進めていく予定です。
しかし、先進国同士の宇宙利権の争いや、防衛視点の醜い競争は是非やめてもらいたいもの。あくまでも人類のサステナブルな平和のために、国際的ルール作りや共存共栄の道を構築してもらいたいものです。日本はそういう観点でリーダーシップを発揮できないものか?
こういった状況をみると、米国が中国を抑え込もうと躍起になっていた意味がわかりますね。
※個人的な見解であり、所属する会社、組織とは全く関係ありません