2020/12/10

【佐山展生】日本の空に「第三極」が育たないワケを話そう

NewsPicks編集部 記者
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。航空需要は蒸発し、世界各国でエアライン倒産が相次いでいる。
日本のエアラインも、各社借入を増やし、固定費を削るなど、生き残りのために死力を尽くしている。
だが、話題に上るのは、もっぱらJAL、ANAばかりで、2012年に新規参入を果たしたLCC(格安航空会社)の存在感は薄い。
日本にLCCは7社あるが(11月に破産申請したエアアジア・ジャパンは除く)、売上高は微々たるもので、当初期待されていたような「第三極」として、JAL・ANAの対抗勢力には育っていない。
それどころか、LCCのほとんどはJAL、ANAの傘下に組み込まれ、大手と「競争」するのでなく「庇護」を受けている有様だ。
日本の空には、なぜ「第三極」は育たないのか。
唯一の独立系LCCであるスカイマークの佐山展生会長にインタビューし、コロナ危機の深層、スカイマークの存在理由を聞いた。
搭乗率ではJAL、ANAを大幅に上回った
ーー新型コロナウイルスがエアライン業界を直撃しています。
佐山 2月初めに雑誌のインタビューで「全便運休だったらどうなりますか」と聞かれました。
その時は、全便運休はあり得ないでしょう、と。実際に2月は、搭乗数も昨年とほとんど変わらなかったし。
ところが、3月になると昨年の約半分にドンと減った。4月の緊急事態宣言時は85%減、5月が95%減です。
先行きが全く見えず、「これはエラいことになるな」と思いました。
写真:Carl Court / Getty Images
エアラインビジネスは、とどのつまり、どれだけの資金を調達することができるか、それにかかっている面があります。
なぜなら、エアラインの営業費用の約3分の2が固定費です。つまり、売り上げが「0」だと、機体の整備費や人件費など、固定費だけがキャッシュアウトしてしまう。
幸い、スカイマークは、3月末時点で130億円の現預金があり、借入れはゼロでした。5月に速攻でコミットメントラインの上限を300億円まで引き上げました。借入れがあったらキツかったでしょうね。
現在(2020年11月時点)、手元には190億円ほどあります。感染の第二波、第三波に備えてコミットメントラインをさらに200億円確保したので、今のところ資金繰りに関しては、かなり余裕がある状態です。
こういう局面では、「キャッシュ・イズ・キング」だということを、改めて痛感しました。どれくらいお金を持っていて、どれくらい借りられるか、それで運命が決まってしまう。
勉強になりましたね。今回のようなことがもう二度とないかというと、それは誰にも分からない。何年かに一回は、航空需要が激減するイベントはやってくるのです。
――需要回復の手応えは?
佐山 GoToトラベルによる需要喚起もあり、国内線の回復は順調です。10月の搭乗者数は、前年比52%まで戻ってきました。