【直撃】世界最大の精子バンクをつくった男
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ずいぶん前ですが「男性とつきあう前に「お父さんは慶應の医学部かどうか」を必ず確認する」という女性の話を聞きました。初期の治療は慶應病院がリードしていて、精子提供は慶應の医学部の学生が行っていたというのは有名な話です。
つまり兄弟ではないかという懸念を払拭してからしか、付き合えないということ。本人にとっては深刻な問題です。こうした問題は必ずついて回りますので、非公開のドナーでも出自を知りたい権利は守られる法整備は必要でしょう。
そして精子・卵子バンクの両方を経営しているのですね。精子バンクは薄利多売(精子は安い)のビジネス。一方卵子は例え一個でも高い。精子の提供者に払われるのは5千円程度。一方卵子ドナーは6〜7000ドルの報酬です。希少性が全く違いますから、両輪で商売にする、または精子バンクは「規模のビジネス」になるのでしょう。
多くの精子バンクのドナーが「5-10名」というのは、驚きましたが、米国の精子バンクで百人以上の父親になった人が「自分は本当はエリートでない」と告白しながらも、多くの「子供たち」と交流する様子が話題になったこともありました。制限しないと百人ぐらいの子供ができてもおかしくないということです。デンマーク発の精子バンク最大手の創業者へのインタビュー。取材に同席しました。
世界中で精子バンクの需要があること、産業として伸びてきた背景、ドナーの選考過程などがよく分かります。「日本上陸の条件」も興味深いです。
ただし、提供精子から生まれた子どもの「出自を知る権利」についての彼の見解は、あくまで1つの考え方として見る必要があると思います。世界中で、成長した子どもたちが、事実を突然知った苦しみや、ドナーがどんな人かを知りたいという強い願いを訴え、議論が進んできました。
彼らやその支援者の働きかけによって、スウェーデンや英国、オーストラリアのビクトリア州など多くの国・地域で、出自を知る権利を保障する法整備や、ドナー情報にアクセスする仕組みが整えられてきました。
提供精子・卵子を使った不妊治療は、生まれてくる子どもの同意を得ることはできません。だからこそ社会の側が、声を上げた当事者の言葉に真摯に耳を傾け、生まれてくる子どもたちの立場に立って必要なルールや仕組みを整えていく必要があるのではないでしょうか。精子を海外に輸出するというのは各国ルールに従わねばならず、ハードルの高い話です。
クリオスによると、例えばアメリカではドナーを検査する際に、「ジカウイルス」のテストが必須になる一方、イタリアでは感染症検査の際に、コレステロール値など10項目以上の検査が追加されるとのことです。
同じドナーの精子であっても、輸送する先の国のルールによって、テストを追加しなくてはいけません。
では手間を省いて全ての国の基準を満たすような「一括検査」をすればいいのに、とも思いますが、すると膨大なコストがかかって、結果、単価が跳ね上がるということになります。
各国のルールを満たしながら、消費者の手に届く価格にするというのも非常に手間がかかります。
さらに、倫理面から国によって、身元情報を開示するドナーしか受け付けないというところもあります。安全と倫理の面から、様々な国の判断があり、その非常に煩雑な手続きをクリアしてでも成長してきたというのは、裏を返せばそれだけ「精子バンクへの需要が高い」ということが言えるのではないでしょうか。
2020年、クリオスから精子を個人輸入した日本の利用者は150人を超えました。新しい時代の選択を、当事者だけでなく、社会を作る私たち一人一人もしっかりと考えないといけないと感じます。
動いた時計の針はもう止められないのだから。