【プロ新書】改めて考える「上場・未上場」の損得
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連載もいよいよ終盤三回目です。今回はスタートアップの「未上場か上場か」という選択肢について考察をしてみました。これまでの二回と同様に、できる限りスタートアップや資本政策に馴染みのない方向けに、わかりやすく工夫しているつもりです。至らない点はご容赦ください。
日本のスタートアップエコステムにとって、長らく「IPOは憧れ」であり、「IPOはスタートアップのゴール」でした。「未上場か上場か」という論点は存在しませんでした。
確かに、一定の成功をおさめた中小企業を生み出すという観点ではIPO/上場は素晴らしいゴールです。また、長年エコシステムのボトルネックであった終身雇用、大企業主義の日本の「常識」を変えていくために、「人材の流動化」を促し、「起業家という希少人種」を増やすために、上場というゴールは有効に機能していたと思います。
ただ、今GAFAという巨大企業、BATを中心とした中国ネット企業の台頭をみて、何も感じない人はいません。今、「上場はゴールではない」と明確に認識すべき時代が到来しています。認識が遅すぎたという指摘はありますが、そう言っても仕方ありません。
そこで改めて考える必要があるのが「IPOとは何か」「未上場か上場か」という問いです。
この問いを考える上での基本的な理解をお伝えするために、本稿を執筆しています。少しでも多くの方にこの論点自体をまず認識いただき、「IPOをスタートアップのゴール」としてではなく、「IPOをスタートアップの通過点」として捉えることで、その先のより大きな成長、社会へのインパクトを皆で目撃できる機会を少しでも増やしていければと思います。
(参考note)
メルカリ
https://note.com/201707/n/nd0c83ac5d4ca
ライフネット生命
https://note.com/201707/n/n73837225a14b
BASE
https://note.com/201707/n/n6fb5e0b21c35米VCのアンドリーセン・ホロウィッツの著名なキャピタリストが書かれた書籍が邦訳されました。
「VCの教科書-VCとうまく付き合いたい起業家たちへ」
https://str.toyokeizai.net/books/9784492654910/
これはベンチャービジネスに関わられる方は目を通した方がいい本だと思いました。
この中で、
アーリーステージの投資先の決め方について、
「VCの場合は、一に市場規模、二にも三にも市場規模だ。大規模な市場が好ましく、小規模な市場は好ましくない」
との記載があります。
日本でこの議論していたら、ほとんど投資できなくなってしまいます。日米で投資プロセスがいかに違うか、その帰結としての上場後の低迷企業の多さ。GAFAMなんて生まれるはずもなし。
本稿は色々な側面から考えさせられますね。
三回とも、興味深く読ませていただきました。早すぎる・小さすぎる上場の議論、大型調達のメリットとデメリット、様々な論点が網羅的に可視化されており必読。
経営サイドで体験的に最も重大だと思っている「上場している状態のメリット」を追加すると、
経営の方向性が見える化されること。
数字も、外部からの評価も、資金調達のプロセスや結果もすべてオープンになるのは、経営者は負担に感じるかもしれませんが、全社員からするとわかりやいものです。
いわば、密室で決まる状態と、大統領選挙のように全員が公表された数字の中で参加する状態の違いです。未上場の時期の経営者とリード投資家との対話は、いわば数名の考えで重要な事業計画の修正や資金調達、投資が決定される密室政治に近い。もちろん良い面もありますが、社員からすると経営者が絶対の存在になります。
上場していると経営者だけではなく、その先にいる資本市場や開示する方針や成績こそが絶対であり、一人の人間ではなくもっと大きな世界との対話になっていくのが実感されます。