非正規格差は不合理とは言えない 最高裁、賞与・退職金不支払いで
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判決文を読みましたがこれは到底一般化できる判例ではなく、裁判所としても個々の事案を鑑みて、本ケースにおいては賞与、退職金を支給しないことは適法という判断のみを下したものと思われます。
判決文によれば、原告は大阪医科大学に1年更新のアルバイト職として勤務しましたが、2回更新したものの、最後の一年は適応障害として欠勤しそのまま退職していて実質2年の勤務だったようです。
同大学には正職員200人、契約社員40人、アルバイト職員150人が雇用されていましたが、その業務範囲は明確に規定されており、正職員は責任が大きい非定型的な業務に従事し、更に転勤、出向もありました。
一方1年間の有期雇用のアルバイト職員は配置転換もなく、業務は全て定型業務のみでした。
要するに最初から全く違う業務であったようです。
正社員とアルバイトの報酬の差は55%で、最大雇用期間も5年と定められてはいましたが、一方で同大学にはアルバイトから契約社員、正社員への登用試験がきちんとあり、実際に毎年10名内外が合格しています。
このように大阪医科大学の雇用制度は法令に遵守した運用がなされていました。
裁判所は以上から正職員とアルバイトの勤務内容は明らかに異なると判断し、正職員とアルバイトはそもそも同一労働に当たらないとした上で、加えて内容は触れていませんが原告には判決に影響を及ぼすレベルの明らかな法令違反があったと述べています。
主文を読む限り原告側の主張が認められる余地はほとんどなく、正直よくこれで最高裁まで戦ったと感心するほどです。
新法施行後初の判例ということもあって注目されていますが、判決文を見る限りこれをもって裁判所が同一労働同一賃金について何かの判断をしたとするのはミスリードであり、その文脈でこの裁判を判断することはできないと考えます。これそもそも平成25年4月1日施行の労働契約法で、有期雇用と無期雇用との間で期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルールが儲けられたことによる裁判ですね。判決文見ていないのでわかりませんけど、最近の法律なのでまだ判例が積み重なっていないと思いますので最高裁の判断が出たことは良かったと思います。
アルバイト職員に賞与が払われていないのが合理的かどうかということで争ったとのことですが、これ少し複雑で、例えば正社員とアルバイトが机を並べ、全く同じ仕事内容を行っている中で給与の差異があるようなら、その差異は不合理だと、すぐ結論に飛びつきがちです。
ですが、例えばそのアルバイトの仕事を正社員がチェックしていて、アルバイトのミスは正社員のミスであるという業務分掌になっていたら、責任の範囲が全然違いますから社員だけに賞与が払われるのは合理的に説明ができます。
また、いわゆる総合職であれば将来昇進して管理職になり転勤も想定されていて、とはいえキャリアが浅いときは丁稚修行のように事務作業をしているケースもあり、そうした場合も格差があるのは合理的であるという主張になるわけです。
ですので、時としてあまり明瞭に見えてない責任の範囲や将来の見込みあたりをどう事実認定するのかといったあたりがポイントと思います。目の前の作業が同じだから格差は認めない、という法律では有りません。この判決は正当と思います。それはボーナスが支払われたかどうかより、基本的にアルバイト従業員に正社員と同じ仕事をさせていた事自体が問題だからです。アルバイトとは、雇用者にとっては時間労働力。そして被雇用者にとっても正社員になりたくない場合の選択肢として存在するべきなのです。
しかし現実には今回の訴訟を起こした女性のようなケースはザラなのでしょう。少子高齢化が進む中、アルバイトという待遇でも正社員同様の仕事をこなしている、プロフェッショナル精神に長けた優秀な人材を見逃してはいけません。
日本企業・団体は中途正社員採用の門戸を広げるべきです。出産や駐在追従などで(今後は介護も)退職を選択せざるを得なかった優秀な人材を、プロパーと同様の福利厚生を提供して中途採用すれば、プロパーが気を引き締めるという相乗効果も生まれるでしょう。もちろん基本的な健康保険や年金以外の例えば年次休暇日数は勤務年数に連動させるなどして対応すれば不公平感はないでしょう。
コロナ禍でリモートワークを常態化させる動きのある2020年、ポスト・コロナを視野に正社員の時短や週3日勤務対応を考える時期が来ています。