「東電が人材引き抜き」合弁先ベンチャーと対立 移籍は技術移転目的か、自由意思か
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合弁会社の目的にもよりますが、「事業ノウハウ」だったりすると容易に想像し得るはなしです。私も昔この問題で散々頭を悩ませましたが、本人意向と経済条件、契約内容だけをとってもとても難しい。
本人の意向にしても「大変魅力的な職場なので明日から移籍します」「君には職業選択の自由があるから、さあ、どちらの職場がいいか選びたまえ」なんて言わないです。もっと寝技的。誘った方も誘われた方も決定的なことは言わない。
あまり縛りすぎると憲法に触れるし、最悪のケースでは合弁のどちらでもない競合に行くケースが多くなる。これが最悪。本件は論点が2つあります。1つ目は元CTOとの誓約書の内容(いわゆる競業避止義務)、2つ目はノウハウ・技術の取り扱いです。
1.競業避止義務について
元CTOの競業避止義務が有効となるかどうかは、以下の6つのポイントが重要となります。
①企業の利益
②従業員の地位
③地域的限定
④期間
⑤禁止行為の範囲
⑥代償措置
競業避止義務を規定する契約実務では、このポイントを押さえた内容とする必要があるわけですが、意外とこれが厄介(特に④と⑤)で、有効となるかどうか、微妙なものとなることが多いです。
詳細につきましては、以下の資料等をご参照ください。
・人材を通じた技術流出に関する調査研究報告書(p.11~)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/houkokusho130319.pdf
2.ノウハウ・技術の取り扱い
本件のような場合、対象となるノウハウ・技術が不正競争防止法の営業秘密に該当するかどうかで、対応が分かれてきます。
ただ、一般的に、従業員や役員の頭の中にあるノウハウ・技術は、原則としては営業秘密に該当しません(※)。このため、元CTOのノウハウ・技術が、外部の媒体に形式知化されていたかどうかが、ポイントとなるでしょう。
また、システムとして稼働している情報についてのノウハウ・技術については、別途著作権として保護される可能性があるため、それはそれで検討の余地があります。
※ 営業秘密管理指針(平成31年1月23日改訂版 p.12~「④媒体が利用されない場合」以下参照)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/guideline/h31ts.pdf
…このように、自社のノウハウ・技術を保護することを日頃から意識しつつ、実務上の対策も万全にしていない限り、あるいはノウハウ・技術を特許化していない限り、ノウハウ・技術を守り切ることは難しいものです。東電の人をベンチャーが引き抜いたのかと思いましたが、逆なんですね。意外。NDAのnon solicit条項が入っていたか、等も論点になりそうですね。プロフェッショナルファーム界隈では当たり前に入っていますが、ベンチャー界隈の契約はあまり入っていない気がしますが、、契約より事業の成長可能性などでattractするのが王道でだからかと思いますが。。