【0→2400億円】東レは「炭素繊維」世界シェアNo.1をどう築いたか
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注目のコメント
大変良い話だと思いました。
同時に、前の阿部さんの記事もそうなのですが、ではどうしてこういう短期的には成果が期待できないけれど、長期的には飛行機に、というような素材に対して、R&Dの投資が継続できたのか、というところをCFO側の立場からも聞いてみたいと思いました(そういう記事はあるのでしょうか)。
CTOサイドで技術開発のスポンサーになることは重要である一方で、シード技術を育てて事業化するという非常に長いスパンの投資判断はかなり難しいものがあると思います。
榊原清則『イノベーションの収益化』では、日本企業は研究開発投資をしているけれど、その収益化が出来ていないという問題を指摘していますが、これは事業化という観点を研究開発のどこかの段階からすり合わせていく、スクラム開発体制が必要であることを示しているとも言えます。では、それが東レの場合どのように可能だったのだろうか?ということを別な部門からも知りたいと強く思いました。東レとともに、素材のスゴさを追いかけてきた連載第4回のテーマは「炭素繊維」です。炭素繊維ときくと、僕の身近なところではロードバイク、釣り竿、ゴルフシャフトなどが思いつきますが、建築・自動車・飛行機と実に様々な製品に構造材として採用されています。
「それって炭素繊維が軽くて、強い素材だからでしょ?」と思いきや、実はそんなことはありません。様々な技術融合や技術革新、そして「これはいつか世界を変える素材になる」と信じて極限追求してきた技術者がいて、加えてそれがどう製品に使われるのかまで考え、成形・用途検証するからこそ生まれたものだったということがわかりました。
ROIといった指標など、どれくらいの期間でいくら利益回収できるのか?といったシミュレーションは重要ですが、炭素繊維の場合は普及するまでなんと50年以上。東レの研究開発の真髄は、まさにこの「炭素繊維」に現れていると思いました。有名な話、皆さんご存知のBCGマトリクス(事業をマーケットシェアと市場成長率の切り口から4つにプロットしたフレームワーク)で捉えると、東レさんが扱っていた繊維事業は「金のなる木」から「負け犬」に滑り落ちていく斜陽事業の代表例みたいに扱われてきました。だからこそ、帝人や東洋紡、旭化成などの同業他社では横文字の事業への投資強化が盛んに行われてきました。
ただ、東レさんは繊維事業が決して斜陽事業ではなく、これからもキャッシュを生み続ける成長事業と認識し、コツコツ投資を続けてきた、と書籍で読んだことがあります。炭素繊維の市場が花開くまで50年の歳月がかかったようですが、これこそまさに経営者の信念であり、「金のなる木」から次世代の成長を見つけた良い例なんだと思います。