この連載について
ビジネスや働き方が多様化し、正解がない時代に、自分を信じて一心に仕事をする人たちがいる。そこにあるのは独自の「哲学」だ。仕事人のヒストリーをたどり、道標となった哲学を浮き彫りにしていく。
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医薬品メーカー。がんを重点領域、疼痛、中枢神経系疾患、心不全・腎障害、希少疾患を次世代領域と位置付ける。バイオベンチャーモデルへの転換に取り組む。
時価総額
9.34 兆円
業績
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以下、抜粋
私はマーケティングが経験上「得意」ではあるものの、自分としては事業家であり、経営者だと思っています。
私にとっては事業を伸ばすことが第一優先で、そのための方策の一つとしてマーケティングをしているだけ。
>知らない人に話しかけるのは苦手だという人もいると思います。でも僕は昔からけっこうそれが得意なタイプです。
いまだにバーなどで横に座った若者相手に、「一杯ご馳走するから、何のアプリ使っているか画面見せてほしい」と言って、「このアプリ、どういうところが好きで使っているの?」と聞く、といったことを日常的にやっています。
ーーー
新卒で丸井グループに入社し、テイクアンドギヴ・ニーズで事業戦略とマーケティングの責任者を務めて成果を上げた実績から、2014年にネット印刷・集客支援のプラットフォーム「ラクスル」を手掛けるラクスルに入社。
CMOの田部正樹氏は、約50億円のマーケティング費用を投資し、5年で売上高を約25倍に伸ばした。「自分はマーケターではなく、マーケティングが得意な経営者に近い」と自称する田部氏は何者なのか。
大学時代は渋谷のバーの雇われ店長をしていた。「顔が怖い、ただのチャラチャラした人間だった」と語る田部氏の仕事ヒストリーを追いながら、事業を伸ばす独自の哲学を紹介する。(全7回)
■第1回 5年で売上高25倍に伸ばしたマーケティング
■第2回 丸井で不遇な新人時代、ゴスロリ館でPDCAを回す
■第3回 テイクアンドギヴ・ニーズに転職後、業績急降下
■第4回 ただのマーケターから卒業、経営者の自覚を持つ
■第5回 成功しても失敗しても、その理由を説明できるか
■第6回 自分の感性をあまり大事にしないほうがいい
■第7回 トレードオフを意識。何かをやれば、何かを失う
かつてセオドア・レヴィットが述べたように、既存顧客に話を聴いても既存のサービスの枠内でしか語ってくれません。そこに適応すると、事業活動の幅を大幅に狭め、長期的な衰退を招きます。
しかし、田部さんがなさっていることは徹頭徹尾、既存の顧客とは違う対象、時には一定の枠組みの下でのランダムな対象へのヒアリングで、そこから得られた情報に基づくインサイトを構築する、というものでした。しかも、実施に自分の体を使って情報を集める。ここにもポイントがあります。
多くの企業が抱える問題は、かつては市場が確立していなかった中で事業を構築していった結果、市場が確立し、その結果、既存顧客の声以外の声を聞くことが構造的にできなくなっていることです。これを組織論では「タイトカップリング」と言いますが、このタイトカップリングを抜け出す方法が、一定の緩やかな枠組みと仮説に基づいたランダムな対象へのアクセスです。
非常に興味深いのは、田部さんが、この街のバーで聞く声と、別な街では全然違う結果になり、その溝をどう埋めていくかがマーケティングの課題だと述べている点です。しかし、このカテゴリーの差異は、体を使ってみないと中々見えてこないかもしれません。例えば、東京に住んでいるとそれ以外は「地方」というカテゴリーでくくる人も多いですが、例えば福岡であっても中洲と天神と大名では全然違いますが、その差異はその場に参入しないと見えてきません。
どのように様々な声をカテゴリー分けするか、そのカテゴリー間の差異を統合する枠組みを構築するか、ということがマーケティングの本質である、という話であり、これはまさに様々な声と対話するということそのものであろうかと思います。
田部さんのインタビューシリーズ、非常にこの先が楽しみで仕方ありません。
いい人選。これは楽しみ。
「武器になるのは、消費者の声を徹底的に聞きまくって、彼らが求めていることの解像度を上げ、そのギャップを埋めにいくこと」
ラクスルのマネジメントは、松本社長が「その分野では自分が敵わないと思う人材を集めた」とおっしゃる自慢のメンバーですし、TV CMプラットフォームのノバセルも着実に成長しているので、その人物像が見えてくるような内容を期待します。
こちらはマーケティングではないのですが、顧客起点の考えは同じ。
自分達だけで色々考えてみたところで、単なる思い込みでしかなかったりもする。
顧客と話すことはマーケティングであれ、売った後であれ、いつも大きなヒントをくれる欠かせない手法のひとつです。
買う側、使う側には、それを選んだ理由があります。その理由にどうやって到達するのかに執着することなしに、事業の拡大などできませんね。
今後の連載が楽しみです。