「アウトカム・ベース」で加速する、ヘルスケアの未来とは
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医療・ヘルスケア領域で
既存の枠組みや価値観の変革期を迎えています。
健康の自己責任化、アウトカムベースのしくみ、
持続可能なヘルスケアの未来といったテーマについて、
アクセンチュア マネジング・ディレクターの石川雅崇氏と、
LINEヘルスケア代表の室山真一郎氏、
Eight Roads Ventures Japanの鈴木利衣奈氏に
ディスカッションしていただきました。
ぜひ、ご一読ください。成果報酬型の支払い制度は「pay for performance」と呼ばれ、近年先進国で広がっている流れです。医療の質の指標としては、ストラクチャー(スタッフの人数や医療機器の充実度)、プロセス(医療行為の内容)、アウトカム(生存率や死亡率)などがあり、医療の目的を考えればアウトカムベースで質を評価するのが最も合理的といえます。
一方でpay for performanceの弊害として、重症患者を多くみる医療機関はアウトカムが悪く見えてしまうため、結果として医療機関側が「良くなりそうな人を選別する」ことが起こりかねません。例えば外科医の質が手術後1年後の患者死亡率で評価されるようになったとすると、外科医は簡単な手術ばかりを行い高齢者や難しい手術を避けるようになるでしょう。成果報酬制度は理に適っていますがこのようなデメリットがあることも認識されるべきです。アウトカムベースの観点でヘルスケアの未来を捉えると、マネタイズ方法の広がりも検討していくことが不可欠です。
これまでの医療機器や製薬ビジネスは、マネタイズ先が主に医療機関に限定されており、多くの国では公的な医療保険の取得を前提としたビシネスの画一的な展開が主流でした。
一方、アウトカムベースの世の中ではデジタルツールを活用した効果の定量化/可視化が前提となり、これまでに直接的なメリットを感じられなかったステークホルダーの発掘が重要となります。
実際に現在アウトカムベースを打ち出している企業のビジネスモデルでは、モノやサービスの充実に加え、保険償還を前提せずとも「安定的なマネタイズモデルの構築=ビジネスモデルのイノベーション」がセットになっているケースが多くみられます。
例えば、先月Teladocとの間で180億ドルの大型統合を果たしたLivingoは、モノやサービスだけを捉えると数多ある糖尿病管理アプリの一つに過ぎません。一方で、彼らが本当に強いのは、米国で増加している企業健保(民間保険)をキャッシュカウとして握っている点です。
米国では企業が従業員の医療費負担を抱えるプランが近年増加してきており、個々の企業における支払い医療費の削減のインセンティブが向上している点に目をつけて「アプリの介入」による支払い医療費の削減効果を定量化していきました。
このように「アウトカム=臨床効果=保険償還」という方程式を敢えて崩し、ガラガラポンで新たなマネタイズ先/ビジネスモデルを見つけることができるかが今後の焦点になりそうです。