日本ペイントHD、ウットラムが買収へ 1.3兆円
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世界的に見ると塗料マーケットはM&Aが盛んな業界の一つで、日本ペイントだけでなく世界のトップ3企業も全てM&Aを繰り返して成長してきた歴史があります。
現在の世界トップ10は以下の通り。
1位 PPG (アメリカ) $15.4 billion
2位 シャーウィンウィリアムズ(アメリカ) $12.1 billion
3位 アクゾノーベル (オランダ) $10.36 billion
4位 日本ペイント (日本) $5.6 billion
5位 RPM (アメリカ) $5.3 billion
6位 アクセルタ (アメリカ) $4.7 billion
7位 BASF (ドイツ) $4.3 billion
8位 関西ペイント (日本) $3.9 billion
9位 アジアンペイント (インド) $2.75 billion
10位 ジョータン (ノルウェイ) $2.1 billion
この分野は日本企業が結構強い分野で、日本ペイントと関西ペイント以外にも世界のトップ30にはエスケー化研、中国塗料、大日本塗料、日本特殊塗料、藤倉化成などがひしめいています。
ただ日本市場の縮小は誰の目が見ても明らかである以上、海外進出は必須の状況で日本ペイントも2018年に第6位のアクセルタとの経営統合を試みましたが失敗。
代わりにウットラムとの合弁事業を統合する形で、実質的にはウッドラムグループの傘下となっていました。
アウトイン型のM&Aは色々と賛否もあるでしょうが、日本企業がグローバル化する中で、こうした形も一つのあり方なのだろうと思います。3点。①今回のスキームなど、②塗料業界の状況、③これまでの文脈。
会社説明資料:https://bit.ly/3gojqdi
①今回のスキームなど
端的には、ウットラムの事業を取り込むのに日ペが株を割り当てる(ウットラムはキャッシュアウトなく、日ペの保有率を上げ、自社がこれまで持っていたアジア・インドネシア事業は間接保有となり保有率減少)
日ペ株主にとっては、これまで51%出資だったアジア事業と、ウットラム傘下のインドネシアの塗料子会社の利益取り込みの一方で、持ち分比率が約2/3になる(スライド4)。
結果純利益は6割、EPSは10%増というのが会社の想定。希薄化で持ち分は減るがEPS増えるのでプラスというロジック。バリュエーションはスライド9、今の日ペが高いのでそれより安い(普通に見たら高め、という印象)。インドネシア事業は直近4年の業績は安定推移(スライド20)。
②塗料業界の状況
塗料は、顔料と樹脂を混ぜて作られるが、あまり生産設備が重くない産業でROIC高め。建築用、工業用、自動車用があり、特性やチャネルが違う。
グローバルでは集約が進んできていて、販路(地域・用途)を確保する形。
②これまでの文脈
元々日ペはウットラムとアジアでJVをしていた。2013年にはTOBを提案したが撤回、その後持ち分を増価させたりして、2018年にはウットラムが取締役を送るために株主提案をする動きを見せた(①、②)が、その後調整をして株主総会での戦いにはならなかった(③、④)。
そういう文脈を考えれば、流れとしては驚きはない。また日ペの株価が下がって一番困るのはウットラムとゴー氏で、長期的には少数株主と利益は合っている。
①https://newspicks.com/news/2762709
②https://newspicks.com/news/2837005
③https://newspicks.com/news/2857192
④https://newspicks.com/news/29117712002年のロシュによる中外製薬の子会社化以来の象徴的なout-in案件ではないでしょうか。
日本ペイントHDによる記者会見を視聴していますが、社長のコメントによると、第三者割当増資の結果として持株比率が6割弱になっただけであり、子会社化という目的ありきではないとのこと。
それでも大きな決断だったと思います。
中外製薬も約20年前の大きな決断があったからこそ、規模では遥かに大きな武田を超える圧倒的な利益率を実現し、業界トップの武田と同レベルの給与水準、国内製薬企業で時価総額首位とハッピーな会社になっています。
日本ペイントも同じような道を辿ってくれるといいですね。