米で54.4度観測、デスバレー 89年ぶりの暑さか
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現時点でWMO(世界気象機関)の認定する最高気温記録としては1913年に同じくデスバレーで記録された56.7℃とされています。今回はデスバレーではこれに次ぐ記録となりました。
最高気温の記録については、特に古いものについては常にその記録が正確なのかということが問われる場面があり、例えば2012年まで世界の最高気温記録とされていたものは1922年のリビアでの57.8℃とされていました。しかしこれは未熟な観測員が温度計の数字を読み間違えたものとして扱われ、公式の認定を取り消されてしまいました。もっとも日本においては教科書で長らく1921年のイラクでの58.8℃というものが書かれていましたが、これは1934年に日本の文献に引用されるときの誤転載であったとされており、その体たらくには閉口してしまうようなものです。
デスバレーでの1913年の記録についても、砂嵐によって高温の砂が温度計に当たっていたことにより2-3℃の誤差があったのではないかという議論も投げかけられている状態ですので、今回の記録が特に問題のないものであれば、デスバレーにおいては実質最高気温記録に並んだようなものと考えて良いものと考えられます。16日のデスバレーでは砂嵐の発生は報告されていませんし、上空の高気圧によりロッキー山脈から吹き降りるフェーン現象が発生していたと考えられますので、現時点では記録に対し重大な疑問はありません。気温50度を超えるとどのようなことが起こるかというと、熱中症の頻発や水不足、干上がりによる山火事リスクだけでなく、航空機が離陸不可能となる(空気の膨張により離陸に必要な揚力が不足)、路上公共物や靴底などいろいろな物が溶ける、冷房のための電力供給量が追い付かず停電となるなど、いくら生活区域では冷房を使うとしても「人間が住むには暑すぎる」ということが物理的にも感覚的にもわかるといいます。
この「人間が住むには暑すぎる」エリアは世界的に広がることが予測されています。海面上昇により沿岸部の人が移動せざるを得なくなる可能性が指摘されていることはよく認識されていますが、これと同時に陸地についても気候の変化や砂漠化で人が住めなくなるエリアが増えていく可能性が高いことを忘れてはなりません。そして人が住めなくなるだけでなく、食料耕作地もどんどん減っていき、生物多様性も失われていきます。
地球温暖化対策としてのイノベーションにかかる期待も大きくなりますが、このための資金や技術を育てる余裕のある先進国が、自国だけでなく、気候変動による被害を先進国以上に受けやすい途上国までカバーして対応する必要があります。
また、温室効果ガスの排出抑制を行うことはもちろん必要ですが、残念ながら温暖化は進むことを覚悟し、予測を立てたうえで、これに適応するような柔軟な社会の仕組みも整えていく必要があります。観測史上世界最高気温。場所はその名もデスヴァレー(死の谷)のファーネスクリーク(かまどの入り江)。今週しばらく熱波が続き、あちこちで停電がまた予想されます。(英語記事コメント再掲です)