バンコクで2014年以降最大の反政府集会、学生の王室批判に賛同の声も
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タイは、2014年のクー・デタ以降、実質的に軍の統治下にあります。2019年には総選挙が実施されましたが、躍進した野党を非合法化して、無理矢理多数派を確保したそれまでの軍事政権のトップ、プラユット陸軍大将が首相に就任して現在に至っています。
バンコク中心部や、全国の地方都市で集会を行っている人々には、大学生などかなり若い層が目立ちます。彼らは何を要求しているのか?というと、基本的には軍による権力の独占と汚職への抗議は共有されています。ただ、若い世代はタイという国と社会の根本的な変化を求めているように見えます。集会を見ていると、LGBTの権利について訴える人々、制服と校則に異議を唱える高校生、労働組合、人権活動家など、様々な主張を壇上から次々に訴えています。
集会では、「反封建制」、王室の改革、という要求も目立ちます。2014年のクー・デタは、過去90年だと19回目のクー・デタです。タイでは、立憲民主制で、選挙も議会もありますが、クー・デタで選挙結果が無効にされることが繰り返されてきました。特に近年では、2001年に華人の起業家タクシン首相が総選挙で圧勝したものの、2006年にはクー・デタで失脚しました。王室に縁のない華人の経済界出身者が政治的力を持つと、王室の意を受けた軍によるクー・デタで潰されることの繰り返しです。
つまり、王室がクー・デタという手段で、実質的には選挙を無効化して軍を政権につける、という仕組みになっています。この仕組みの下で、タクシン派=赤シャツ派が総選挙で圧勝しては、軍・王党派=黄シャツ派がクー・デタで潰す、という繰り返しが20年続いています。
今抗議行動をしている若い世代は、タクシン派=赤シャツ派ではなく、そういう繰り返しに飽き飽きした世代でしょう。軍や王党派の抑圧的で汚職の多い、経済もコネで動き、新興企業家を潰す、非効率な国の運営にも批判的でしょう。
しかし、武力を持っているのは、軍・王党派であり、根っこからタイを変えたい若い世代の要求が通るのは簡単ではないでしょう。バンコクで、軍政に移行した2014年以降で、最大規模のデモ。現政権の圧力はコロナ禍でも更に強まる中で、不満の鬱積度合いは高まっている感あり。