ユーロ圏4~6月GDP -12.1% 統計開始以降最悪に 新型コロナで

ユーロ圏4~6月GDP -12.1% 統計開始以降最悪に 新型コロナで
ドイツやフランスなどユーロ圏19か国のGDP=域内総生産は、ことし4月から6月までの伸び率が前の3か月に比べてマイナス12.1%となりました。また、年率に換算すると、マイナス40.3%と、アメリカを超える厳しい結果となり、新型コロナウイルスの影響は、世界経済全体に広がっています。
EU=ヨーロッパ連合の統計局は31日、ユーロ圏19か国のGDPについて、ことし4月から6月の伸び率が前の3か月に比べて実質でマイナス12.1%になったと発表しました。

これは、新型ウイルスの感染拡大で、経済活動への打撃が一段と深刻になったためで、前の3か月のマイナス3.6%からさらにマイナス幅が拡大して、統計を取り始めた1995年以降、最悪の水準となりました。

また、年率に換算すると、マイナス40.3%と、年率のGDPの伸び率でマイナス32.9%を記録したアメリカを超える厳しい結果となり、新型ウイルスの影響は、世界経済全体に広がっています。

ユーロ圏では小売店の営業や自動車の生産、それに観光業といった経済活動が再開し、域内の景気は最悪の時期は脱したという見方が広がっています。

ただ、感染が再び拡大することへの懸念も根強くあり、政府や中央銀行による財政・金融両面の大規模な対策に効果が上がって、景気が感染拡大前の水準にいつ回復するか不透明な状況です。

カギは観光業

ユーロ圏の経済回復のカギをにぎる産業のひとつが観光業です。

各国は、深刻な打撃を受けた、観光業の立て直しに向けて、6月以降、EU域内の移動制限を緩和したほか、国内旅行を後押しするキャンペーンも行っています。

このうち、観光業がGDPの21%を占めるギリシャでは、7月1日から、地中海の主要な観光地でも、空港の運用が再開され、ほとんどのホテルが営業を始めました。しかし、ホテルの予約は埋まっておらず、ギリシャのホテル連盟によりますと、ことし1年間の収益は、前の年に比べて70%近く減少する見通しで、損失額は56億ユーロ、日本円でおよそ6900億円にのぼると予測しています。

また2108年、8940万人が訪れた世界一の観光大国、フランスも苦境が続いています。首都パリでは、エッフェル塔やルーブル美術館などの観光名所が相次いで再開していますが、地元メディアによりますと、5つ星ホテルの客室の稼働率は、7月と8月が10%にとどまる見通しとなるなど、本格的な回復のめどはたっていません。

さらに感染が再び拡大することへの懸念も出ていて、バカンスシーズンのかき入れ時を迎えている観光業を立て直せるかは、ユーロ圏の今後の経済の行方に影響を与えそうです。

財政・金融で大規模対策

過去最悪の打撃を与えた、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ユーロ圏の政府や中央銀行は、景気を下支えするため、財政・金融の両面で、大規模な対策を打ち出しています。

ユーロ圏19か国が加盟するEU=ヨーロッパ連合は、今月21日、経済の立て直しを図るため、補助金や融資を柱とした7500億ユーロ、日本円で90兆円規模の基金を設立することを決めました。

また、各国政府も独自に対策に乗り出していて、このうちドイツは、企業の資金繰りなどを支援するため、憲法にあたる「基本法」で義務づけられている財政均衡を棚上げし、7年ぶりに国債を新規に発行することを決めました。

さらに、ユーロ圏の金融政策を担うヨーロッパ中央銀行は、資金の供給を一段と増やすため、各国の国債などを新たに買い入れる緊急対策に踏み切り、先月にはその規模を1兆3500億ユーロ、日本円で160兆円あまりにまで拡大させています。

このようにユーロ圏では、財政と金融の両面で、政策を総動員する形で経済の下支えを図っていますが、景気の低迷が長引いてさらなる対策が求められた場合、財源などの問題で、十分な措置を講じることができるか、難しい判断を迫られることになりそうです。