日本と台湾の狭間で「無国籍」を生きた少年
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2019年の日本の在留外国人統計だと、無国籍者は640人です。ただし、これは外国人登録をしている人数なので、登録をしていない無国籍者が、日本にはさらに多く暮らしていると考えられます。
日本に住む人が無国籍である理由には、様々な経緯があります。この記事のように、日本人と外国人の間に生まれた子供が、どちらの親とも法的な親子関係が無い、という経緯の場合もあります。日本や欧米諸国で多いのは、不法滞在者の男女に子供が生まれた時に、届け出をしなかったために、その子供は無国籍になる、というケースです。
無国籍者は、学校に行くこともできず、公共サービスも受けられず、安定した就職もできません。そういう人たちが、社会に増えていくことは、社会に望ましいことではありません。親の責任、ということでは済まず、そもそも子供自身には責任はないのですから、教育や福祉、就職の機会が確保されるべきでしょう。
世界全体で見れば、無国籍者は1200万人以上います。民族や宗教を基準にした迫害、紛争が原因である場合が多く、ミャンマーのロヒンギャの人々のように、元々もっていた国籍を、迫害の一つの手段として国籍剥奪で奪われた人々もいます。
https://www.unhcr.org/jp/stateless日本で生まれたにも関わらず「無国籍者」として生きざるを得なかった一人の青年と出会い、彼の話を記事にまとめました。彼は国籍がないことと両親がいないことの両方を抱えて生きてきました。その二つが切り離しがたいものとしてある彼の人生の経験を、少しでも読む人に共有できたらと思います。彼が育った児童養護施設で語ってくれた人生のこと、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
両親のDV等の事情で無戸籍となった日本人の事情を追った「無戸籍の日本人」(井戸まさえ)という本があります。
その中で自らも無戸籍の子供を持った著者が日本の国会議員にアプローチする中で、「僕は『親の因果が子に報い』ってあると思うんですよ」という言葉をある議員が漏らした事が書かれています。
因果応報の思想がすり込まれた日本人の精神構造の片隅からふとすればポッと出てきそうなこの考えですが、これを強く否定することが、記事に書かれたような無国籍の問題も含めた様々な、特に未成年者の人権や教育福祉を考える上での最低限の基準線なのだと思います。親の事情に関わらず子の人権は国家によって守られなければなりません。
宏明さんは「運命」として乗り越えてきたかもしれませんが、国の仕組みとしては「運命」のままに取り残すことは許されません。小田川弁護士の言うように「日本国籍の取得を人権保障の問題として認識する必要」があり、積極的な救済措置が求められる事柄です。無戸籍の問題と関連して国会議員の間で改善のための動きがあるとすれば調べてみたいと思います。
最後に「国籍や在留資格は問わずに受け入れているということでしょうか」という問いに「問わないです」と即答の繁田園長の言葉に少し胸が熱くなりました。単に問題を問題として報じるのではなく、周囲の人たちとの関わりも含めて多相的に伝えようとした大変な良記事だと思います。