小野薬の開発中止品含め3候補 新型コロナ治療薬に有望
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ある病気に使われている薬剤を全く別の病気の治療に用いることを「drug repositioning(ドラッグリポジショニング)」と呼びます。
今回紹介されているONO-5334はカテプシンKと呼ばれる物質を阻害する薬です。カテプシンKはもともと骨を吸収して骨の密度を低下するのに関わる因子として知られており、骨粗しょう症の治療薬として臨床試験が行われていました。このカテプシンKが、実は新型コロナウイルスが細胞内で増幅する過程にも必要な因子であることが判明しました。
drug repositioningでは、すでに使用されてきた経験のある薬剤を用いるため、どのような副作用があるかが十分わかっており、コストも安く抑えられるメリットがあります。一方、製薬会社の側からは、お金になりにくいという理由で研究が進みにくいといった側面もあります。
今回報告された論文によれば、ONO-5334という薬剤は12000のうちの化合物の中から、5つの最も有効な化合物に選ばれ、細胞レベルの研究ではありますが、ウイルス感染細胞を72%減少させたことが示されました。
特にこの化合物は、競合薬との兼ね合いで試験中止となっていたものの、第二相試験ですでに安全性が確認されていた薬剤であったため、安全面がクリアされていることから、いくつかの臨床試験のステップを省略して後期臨床試験に入ることができる可能性もあり、薬剤開発という点で有利になります。
引用文献:https://www.nature.com/articles/s41586-020-2577-1_reference.pdf論文によると約12000もの既存の薬剤について、新型コロナウイルスの複製を阻害する作用を調査したところ、このONO-5334が有望な薬剤として浮上したとのこと。報告されたのは実験レベルの成果であり、生体内でどのように効果を示すかは全く未知数で、現段階では何ともいえないとは思います。ただ新しい薬を開発するよりも、既存の薬剤を使用したほうが副作用や生体内での薬物動態がすでに理解されている点から、効果が証明されれば有利な側面はあります。
元の論文はこちら
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2577-1
ONO-5334については知りませんでしたが、カテプシンKというプロテアーゼを阻害することで骨密度を増やし、骨粗鬆症の治療薬となるのが期待されていた薬とのことです。抗ウイルス薬でも何でもないところからこういった候補薬が浮上するのは本当に興味深いですね。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/medchem/23/3/23_19/_pdf開発を中止した薬まで再検討されるとは、本当に世界中の科学者が新型コロナの克服に昼夜を問わず懸命に取り組んでいることの現れだと思う。スパコンを使った調査などもその背景にあるのかもしれないが、文字通りしらみつぶしの取り組みが進んでいるのだろう。新型コロナに打ち勝つのは科学と理性の力だと改めて思う。