必要なのは、全ての無症状者への徹底的なPCR検査ではない。尾身会長「100%の安心は残念ながら、ない」
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一般的な医療における『事前確率』は、いろんな段階で用いられます。
たとえば、ある疾患の流行期か否か。
インフルエンザの流行期と非流行期では、インフルエンザの事前確率は変わります。ですので我々小児科医は、周辺の感染症流行状況に気を配っています。
たとえば、性別。
極端な例を上げれば、子宮頸がんは男性では発症しませんよね。
個別の状況を把握しなければなりません。
たとえば、症状。
一般的には呼吸器疾患の事前確率をみるための病歴ですよね。極端に言えば咳が心配な方にいきなり大腸がんの検査をしたりはしないでしょう。
たとえば、診察所見。
肺炎や気管支喘息では比較的特有の音が聴こえます。
つまり、事前確率とは血液検査やレントゲン検査、PCR検査のみに用いられるわけではなく、病歴や診察所見でも変わるわけです。
事前確率が低い人に対してPCR検査を行うとはどういう意味でしょう。
夏真っ盛りに病院に行って、話もなにも聞かずに『インフルエンザの迅速検査をしましょう』と鼻に綿棒を突っ込まれて『インフルエンザでありませんでした』といわれて納得できるかというテーマです。
逆に事前確率が高くて検査の意味が低いケースもあります。
家族が数日前からインフルエンザに罹っている家族が高熱を発症したとしましょう。『迅速検査が陰性ですのでインフルではないですね』と言われて納得できるでしょうか?
このような前提のうえでメリット・デメリットをみていくと、わかりやすいかもしれません。
なお、『世界5大医学雑誌の1つ、「ランセット」に掲載された論文の結果に言及した。』と記事にありますが、正確には『Lancet Infectious Disease』ですので、Lancetの姉妹誌です。【検査はあくまで検査】
先日、「無症状者への唾液でのコロナPCR検査」が認められました。
これは検体を「唾液」にすることで、感染防護具の節約と医療機関の負担を軽減するための方策です。考え方としては良いのですが、「無症状者」に対して検査が必要なのか、ということです。
「無症状」なのに「検査」をする、ということはそれなりに理由があるのです。濃厚接触者になった、3密の場面に遭遇してしまった、地域で感染者が激増している、などが考えられますでしょうか。そもそも全く感染者の居ない地域においてご自身も感染対策を講じた行動をしていれば、「検査」をしたいという考えにはならないわけです。
そのような無症状者への検査は、状況にかなり左右されます。それがこのコラムで尾身先生が言われる「事前確率」になります。もちろん検査が陽性となり、陽性者の感染対策の意識が強まればよい、という考えなのでしょうが、陽性だろうが陰性だろうが基本的な感染対策の考え方は変わりません。
検査に対する議論は尽きませんが、尾身先生の記事をいま一度読んで理解を深めて頂ければ御幸甚です。記事の内容は全くもってその通りで、
多くのドクターが繰り返しこの話をしてきていますが、
現実的には、ビジネスもすべてがリモートで完結するわけではないので、
取引先や顧客に対して安心感を与えるためにと、
社員にPCR検査を検討する企業が少なからずあるようで。
それよりも、発熱に限らず体調がすぐれなければ必ず自宅安静、とする方がよっぽど有効ですし、
そもそも、濃厚接触者でもない無症状の人の単発のPCR陰性はなんの安心感にもならないのですが、
それが『陰性証明書』のように実際には用いられているのは問題で、
かといって、企業もどうしてよいのか分からないのが正直なところやと思いますし、
経済活動する上での検査のあり方、感染予防のガイドライン的なものを国から明示してあげてほしいです。
そうすれば不要な検査にコストをさくこともないですし。