対面とオンライン、見極め精度が「高い」面接は?|人材採用のニューノーマル vol.2

昨今の状況下で、採用面接をオンライン化した企業も多いのではないでしょうか。

会話のラリーがしづらかったり、通信のトラブルが発生したりするなど、対面とは多くの点で異なるオンラインでの採用面接。

選考判断に難しさを感じることもあるのではないでしょうか。

株式会社ビズリーチでは、2020年7月2日にビズリーチ導入企業を対象としたオンライン勉強会を開催。「人材採用のニューノーマル『オンライン採用』基本と実践」と題し、株式会社人材研究所代表の曽和利光氏、オンラインコミュニケーションについてアカデミックな知見を持つ採用学研究所所長で株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達洋駆氏を講師にお迎えし、「オンライン面接での選考(ジャッジ)」についてお話しいただきました。
今回はその様子をレポートいたします。


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曽和 利光氏

講師プロフィール曽和 利光氏

株式会社人材研究所 代表取締役社長

2011年に株式会社人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。
伊達 洋駆氏

講師プロフィール伊達 洋駆氏

株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役

株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役。採用学研究所所長。神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、データ分析や組織サーベイのサービスを提供している。

会話を左右する「非言語的手がかり」と「同期性」

Vol.2のレポートに入る前に、Vol.1「オンラインコミュニケーションの特徴」で伊達氏よりご説明いただいた、コミュニケーションの特性を捉える2つの軸について振り返っていきましょう。

私たちが日々行っているのは対面やチャットツール、ビデオ、手紙などさまざまな手段でのコミュニケーション。これらは「非言語的手がかり」と「同期性」の2つの軸を用いて整理できます。

コミュニケーションの整理

「非言語的手がかり」とは、言葉以外の情報のこと。例えば会話中のアイコンタクトやアクセント、服装、表情などが該当します。

また「同期性」とは、会話にどれだけタイムラグが発生するかに着目する指標。例えば直接会って会話をするコミュニケーションは同期性が高く、手紙などタイムラグが発生するものは同期性が低いといえます。

オンラインコミュニケーションは、対面コミュニケーションに比べて「非言語的手がかりが減少するという特徴があり、それによってさまざまな差異が生まれるのです(オンラインコミュニケーションの特徴について詳しくは、Vol.1レポートもご覧ください)


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オンライン面接は「辛口」になりやすい。意識的に「良い面」を見つけていく

では、Vol.2のテーマ「オンライン面接での選考(ジャッジ)」に入っていきましょう。

オンライン面接は、会話のラリーがしづらかったり、相互理解が難しかったりと、難しさを実感している方も多いのではないでしょうか。このデメリットは、過去の研究結果からも言われているものですが、通信環境が改善された現代においても、解決しない課題の1つのようです。これらデメリットに加え、オンライン面接の特徴として、面接官のジャッジが「辛口」になる、という研究結果も出ているといいます。

伊達:研究によると、オンライン面接を受けた候補者は、対面の面接を受けた候補者に比べて評価が低くなるという結果があります。つまり面接官の評価は、対面よりオンライン面接のほうが「辛口」になるのです。

曽和:非言語的手がかりも含め得られる情報が減ることで、確信をもって「採用したい!」と言えなくなってしまうのではないでしょうか。私のクライアントでも、オンライン面接を始めてから面接の選考通過率が下がり、最終面接に上げられる人数が減ってしまったという声を聞きます。

こんな言い方は面接官をされている方に対して失礼かもしれませんが、原理的に考えると面接官は「落とす方がラク」なんです。「本来なら採用すべきではない人」を採用してしまったらその責任を問われる可能性がありますが、「採用しなかった候補者」についてはその後言及されることが少ない。「なぜ採用しなかったのか」という議論が発生しないですよね。ですから、無意識的にどうしてもわからなければ不採用とするようなバイアスがかかってしまうことがあるのです。

伊達:消極的な理由で見送りにしてしまうことがあるとしたら、もったいないことですよね。人事担当者は「オンライン面接は『辛口』になりやすい傾向があるので、より意識して候補者の良い面を見つけていきましょう」と面接官に伝える必要があります。

曽和:そうですね。オンライン面接を導入することで、選考を受けられる人の幅は広がっているはず。応募者や候補者は増えている一方で、企業側のジャッジが厳しくなっていては、成果につながりづらいでしょう。もちろん、自社に合わない人材を採用する必要はないですが、オンライン上で「伝わらなかった/わからなかった」という理由で、お見送りにする消極的な判断をするのはもったいないことですね。

従来から行ってきた対面での面接とオンライン面接では、面接の通過率にどのような違いがあって、最終的な採用決定率の違いはどうかなど、自社の活動を振り返っていただくといいでしょう。

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見極めはきちんとできる? 非言語的手がかりによるバイアス

オンライン面接は評価が「辛口」になりやすく、コミュニケーションだけでなく、ジャッジにも注意が必要ということがわかりました。では、採用面接は「オンライン面接よりも、対面での面接のほうが向いている」のでしょうか。しかし、そうとは言い切れないようです。非言語的手がかりが減少するオンライン面接は、むしろ「見極めの精度」が高いとされています。

伊達:オンライン面接での評価は、仕事のパフォーマンスや定着と正の相関があるという研究結果があります。オンライン面接で評価が高かった人ほど実際の仕事でもパフォーマンスが高い傾向や、定着する傾向があるということです。

曽和:非言語的手がかりが減ることにより、見極めの精度が上がるということでしょうか。「情報量が減っているのに、見極めの精度はよい」というのは、不思議な結果にも思うのですが。

伊達:まさに「情報量が減る」という点がポイントです。昨年まで一般的に行われていた対面面接と、オンライン面接を比較して考えてみましょう。

非言語的手がかりが十分に得られる状態での対面面接においては、「評価されやすい人」というのが存在します。

曽和:例えば、明るく振る舞える人だったり、ボディーランゲージが大きかったり。外向性の高い人は評価されやすいですよね。

伊達:はい、これは研究でも実証されていて、例えば、ボディーランゲージがある場合とない場合を比較したり、話の内容は同じでも明るく振る舞う場合とそうではない場合を比較したり。その結果、非言語的手がかりによって、評価の多くの部分が決まってしまうことが分かっています。

バイアスの抑制

曽和:なんとなく明るい感じの人だなとか、いわゆる「キャラ採用」のようなものが対面の面接では起こりやすい傾向であると。

伊達:そうですね、「キャラ」が生み出されるのは、非言語的手がかりの影響が大きいですよね。

私たちは人と相対したとき「ジェスチャーが大きいから、この人は明るい性格なんだな」と明確なロジックを意識して判断するのではなく、複数の非言語的手がかりによって「なんとなく」無意識に「いい人そう」とか「優秀そう」と感じてしまう。だから実はそもそも、対面の面接も見極めの精度が高いわけではないんです。

曽和:対面面接では無意識のうちに発生しがちなバイアスが、取り除かれるということですね。

伊達:そうですね。非言語的手がかりが減ることで、バイアスがいくらか軽減され、候補者が面接で話す言葉の「中身」にフォーカスするようになる。その結果、オンライン面接では、妥当な見極めができているのではないかと思われます。

オンライン面接は「構造化」がカギ

非言語的手がかりが少なくなることで、「中身」に注目がしやすいオンライン面接。対面面接よりも「構造化」に向いているともいわれています。効果的な面接手法とされる「構造化面接法」。オンライン面接の構造化には、どのような影響・メリットがあるのでしょうか。

伊達:構造化面接とは、面接のやり方や質問内容、評価の基準などをあらかじめ設定するというものです。対面かオンラインかにかかわらず、構造化することで「見極めの精度が高まる」といわれています。

曽和:採用面接をしっかりマニュアル化することで見極めの精度が高まります、ということですよね。

伊達:そうですね。ただ対面で構造化を行った場合、一つ大きな弱点があります。構造化面接を受けた候補者はポジティブな感情が少なくなったり、面接に対する満足度が下がってしまったりするんです。

動機形成への悪影響

曽和:生身の人間として接してもらえていない感じがしたり、機械的に対応されたような気持ちになってしまったりするのでしょうか。

伊達:おっしゃる通りです。対面での構造化面接は候補者に良い印象を与えないということですね。他方で、オンライン面接ではむしろきちんと構造化をした方が、候補者が自分の能力を伝えやすく、話をしっかり聞いてもらえたと感じるという研究結果があります。

また候補者が感じる企業の魅力についても、オンライン面接において構造化した場合、その企業に引かれる度合いが高いという結果が出ています。対して、対面面接では、非構造化の場合にその企業に引かれるという結果です。

企業魅力への影響

※グラフに関する注記
実線が「対面面接」、点線が「オンライン面接」。縦軸は「候補者が面接を受けている企業に対して魅力的に思う気持ちの度合い」を示す。オンライン面接(点線)ではUnstructured(構造化されていない)から、Structured(構造化された)にかけて、魅力的に思う度合いが右肩上がりになっている。

伊達:面接官評価への影響についても、同じような傾向が出ています。オンライン面接では、構造化されるほど面接官の評価が上がりますが、対面面接では、構造化されると面接官への評価が下がります。

面接官評価への影響

※グラフに関する注記
実線が「対面面接」、点線が「オンライン面接」。縦軸は「候補者が面接官に対して好ましいと思う度合い」を示す。オンライン面接(点線)ではUnstructured(構造化されていない)から、Structured(構造化された)にかけて、面接官に対して好ましいと思う度合いが上がっている。

曽和:オンライン面接における面接官への評価は、構造化をしないと対面に比べてかなり悪くなってしまう、ということですよね。

伊達:そうですね。オンライン面接では構造化しない場合、企業の魅力度合いも面接官への評価も、対面面接に劣ってしまうということです。

曽和:人は、自分の考えが伝わらないことを「相手のせい」としてしまうことがあると思います。オンライン面接でのコミュニケーションも例外ではありません。しかし、面接を構造化することで、会話がスムーズに進み「話せた」「きちんと自分の能力を見てもらえた」と感じてもらいやすくなることが期待できますね。

伊達:オンライン面接に関するアドバイスでは「候補者にできる限り熱意を伝えるために、大きく動きましょう(非言語的手がかりを増やしましょう)」というものもあり、それはそれで一理ありますが、むしろ「構造化」に力を入れたほうが費用対効果がよいということが、この研究結果から言えます。


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構造化面接の4つのポイント

オンライン面接における構造化の重要性がわかったところで、具体的にどのように構造化をしていけばよいのでしょうか。
構造化面接は、求める人物像の特定、質問の固定化、詳細な質問内容の特定、評価基準の特定の4つがポイントです。構造化面接の実践手順について、曽和氏が解説しました。

曽和:まずは、求める人物像をしっかり特定するのが基本です。人物像を定める場合は「現実」と「理論」の両面から検討していくとよいでしょう。

多くの方がやられているのは、優秀な社員(ハイパフォーマー)や幹部層にヒアリングを行い、それを整理して「求める人物像」を定めるといったものではないでしょうか。しかし、プロフェッショナルは自分がやっている仕事のやり方・特性を説明することが得意ではないことも多い。「意識せずともできること」を言語化して話すのは、難しいことなんです。そのためハイパフォーマーへのヒアリングだけでなく、適性検査や行動観察も行うとよいでしょう。

質問の固定化では、質問の答えとして期待している「エピソード」を具体的に特定することがポイントです。例えば「できるだけ長い期間取り組んだプロジェクトにおいて、なんらかの工夫や努力で困難を乗り越えた経験について教えてください」などと具体的にするとよいでしょう。

質問内容の特定

曽和:質問に対してさらに深掘りできる場合は、どのような観点で深掘りするかも構造化していくべきだと考えています。候補者が何かエピソードを話す際には「あった問題、取った対策、出た結果」の3点しか話さないことが多い。この前提のもと、問題の背景となるビジネス環境や業務環境、難度などを質問したり(上図「(1)」)、実行した対策以外に浮かんだアイデアなどを聞いたり(上図「(3)」)することが考えられます。

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オンライン面接の注意点

最後にご教授いただいたのは、オンライン面接の準備と当日における注意点について。主なポイントを以下に箇条書きでご紹介します。既に何度もオンライン面接を経験されている方も、いま一度確認してみてはいかがでしょうか。

準備

・周囲の音には要注意
 マイクは思っている以上に周囲の音を拾う。極力個室など会議室での実施が望ましい

・映像、音声、ネット環境の事前確認
 映像や音声に問題がないか事前に確認が必要
 特にネット環境が悪いと双方のストレスとなるため要確認

・緊急連絡先の確認
 万が一、通信が途切れた場合、すぐに次のアクションを指示できるよう連絡先を控えておく

当日

・遠慮は不要であると伝えておく
 「対面よりやりにくいですよね」と伝えたうえで、
 「音声の乱れ等で聞き取れなかったら、話を遮ってでも遠慮なくおっしゃってくださいね」と念押しで伝えておく

・適宜確認を入れる
 「ここまでで聞き取れなかった点はありましたか?」と聞く方が返ってきやすい

・キャッチボール型から、プレゼン型へ
 話の腰を折らず、質問したいことはメモなどをして覚えておき、相手が話し終えてから質問をする

準備
当日
◆        ◆        ◆

今回の勉強会では、Vol.1で紹介した「オンラインでコミュニケーションすることのメリット」に続き、それをオンライン面接でどのように活用すべきか、より実践的な内容を学ぶことができました。

また、オンライン面接の特徴だけではなく「対面面接におけるジャッジが、必ずしも見極め精度が高いとは言えない」という見解にも、参加者から共感のコメントをいただきました。私たちは日々さまざまな「バイアス」のなかで判断を下していることに気付かされたのではないでしょうか。

Vol.3では、「オンライン面接での動機づけ(アトラクト)」についてレポートします。オンラインにおけるデメリットも踏まえたうえで、どのような施策があり、どのような状況で有効なのか、具体的な例とそのエビデンスをお伝えしていきます。

▼ 本勉強会の内容を、動画でご覧いただくことができます ▼
(記事にはない資料・解説も視聴いただけます)

執筆:佐藤 由佳、編集:瀬戸 香菜子(HRreview編集部)

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