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教養を身につけたいけども、忙しすぎて学ぶ時間が取れない。一方で、日々のニュースだけでは、体系的な知識を得られない──。そんなビジネスパーソンに向けて、NewsPicks編集部が月ごとにテーマを設定し、専門家による解説記事をお届けする。週末のひとときで、手軽に「新書一冊分の知識」を体得してほしい。
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With a 150-year-plus history, Nestle is the largest food and beverage manufacturer in the world by sales, generating more than CHF 90 billion in annual revenue.
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彼は、自分自身が提唱したCSVの概念を広く世界に広げようと、元々CSVに興味を抱いたマイケル・ポーターに、彼の理論であるかのように世界に広めさせた。私は、そんな彼のやり方に感銘を受け、イノベーションを「顧客が解決を諦めているような問題のソリューション」と定義づけ、フィリップ・コトラー教授と共有した。
ユニリーバのポール・ポールマンも、ネスレの上級副社長時代に直接会い、議論をしたことを覚えている。まさにマーケティングの人であった。ピーターがポールを自分の後継に選ばなかったのは、お互いが余りに能力的に優れていたので、会長と社長の二人三脚にそぐわなかったらからだろう。そんな偉大な経営者と一緒に仕事が出来たことを誇りに思う。
CSVは「社会的課題の解決」。まさに、私の言う「顧客の問題解決」というマーケティングそのものだ。そして、その達成度を図る目標としてSDGsが採択された。CSVやSDG経営が事業の利益ある成長に繋がるのは、正にマーケティング戦略だからだ。日本の経営者の多くが、社会的課題に立ち向かい、CSVを実践することを心から期待したいし、それはスタートアップの企業家にも当てはまる。
私がマッキンゼーのコンサルタントとして同社と出会ったのが、1990年代の半ばです。CSVが提唱される20年近く前から、同社はトリプルボトムライン(TBL)という経営理念を実践していました。経済的なボトムラインに加えて、社会的ボトムラインと環境的ボトムラインの3つを目標にするという考え方です。
これらを3つのPで表現しています。すなわち、Profit、People、Planet。そしてその真ん中にあるのが、もうう1つのP、すなわちPatient(患者)です。しかもその裏側に、5番目のPが息づいているのが感じられます。それがPurpose(志)です。このような経営を、私は「Purposism(志本経営)」と呼んでいます。
もちろん、きれいごとを並べているだけではありません。なんといっても、彼らのROEは80%を優に超えているのですから。日本のコーポレートガバナンスコードが8%を目指そうといっているのに対して、まさに「ケタ違い」です。社会価値と経済価値を高い次元で両立させているCSVのチャンピオン企業です。ご興味を持たれた方は、ぜひ同社のベック日本支社長と私の対談をご覧ください。
https://www.novonordisk.co.jp/about-novo-nordisk/novo-nordisk-in-brief/interview01.html
もちろん自社の利益は重要ですが、それ以上に地球の未来について真剣に考えているように映りました。人類のこれからを心配しながらも悲観的にならず、ポジティブで力強いブラベック氏の眼光に圧倒されたことを、今でも覚えています。
そのブラベック氏が世界に先駆けて実行したのが、CSVです。しかし私は、ネスレはまだ社会価値と経済価値を完全に実現できてはいないように感じます。
ウェルネス企業への転身を遂げつつありますが、一方で、ペリエやサンペレグリノ、コントレックスなどのボトルウォーターを水源地である欧州から世界中に運んで販売する理由は、CSVの文脈では説明できない気がします。
ブラベック氏が目指した「金融資本主義の次」のモデルは、本当に実現できるのか。壮大な実験の先行きに、これからも注目したいと思います。
CSVは考え方そのものは、SDGsと同じく反対する人はほぼいません。しかし日本企業では理想論だと脇に置く人も少ないと感じます。CSVは「いつになったら単年度黒字になるのかわからない」「利益率が低くて投資回収に時間がかかりすぎる」と考えているからです。なので、CSVの実践にはユニリーバやネスレのようなトップのリーダーシップが必須だと思います。
他方で、ネスレやユニリーバがすごいのは、リーダーが代替わりしてもCSVを主軸に置くことを変えてないことでしょう。つまり、CSVを実践し続ける組織カルチャーを醸成することも必須なのだと思います。
利益を上げるためには、顧客が必要。顧客に見放されてしまった企業は、存続できない。企業理念に共感する顧客をどれだけつくれるか、昔も今も、ビジネスの根本は変わっていませんね。
しかし、事業者の利益の創出と社会的価値の創出が両立しうることを世間に示し、公益性の高い活動を促進させたのが、CSVの功績だと思います。
CSVという概念が生まれてからもうじき10年。ここまで、気候危機やごみ問題の注目度は高まるばかりでした。そして事業を通して社会的価値を生み出すビジネスが、これまで以上に社会から評価される時代となっています。こう言った意味で、もうCSVは特別な概念ではなく、現代社会の人々の価値観と一体化しつつあるのでしょう。
そういう経営者の企業に限って収益性が低いというのはよくあるパターンですが、上場企業であれば株主の求めるリターンを出すことも忘れてはなりません。
もちろん株主だけに配慮しろというわけではないのですが、SDGsもその達成に向けた取り組みをするだけで満足するのではなく収益性にも目を向けることが肝要ですので、その点からはCSVの考え方を取り入れた経営というのは必須だと思っています。
ですが、日本をはじめ世界の多くの企業では、先ずは自社の事業・利益を保とうとします。
その中で、環境への配慮や世界にある貧困や医療など課題に取り組む【方向付け】をするには、SDGsといった大きな視点を示し、企業活動を変えていくだけでも、効果はあるように思います。
「地球全体のサステナビリティばかりを重要視すると、企業活動が持続可能ではなくなってしまう。そして、企業が存続できなければ、我々は困ってしまいます」
ここまで突き詰めてサステナビリティベースの事業を行う企業はまずはありませんから、企業活動が続けられ無いことも無いでしょう。
今まで利益重視、過去のやり方・考え方重視で、やってきた。結果、経済格差や環境への大きな影響が出てきたのは【ニュースとしての事実ベース】では、多くの経営者も知っています。
だからと言って、企業活動・事業の向かう方向性自体の根っこに、いきなり【地球とそこに暮らす人々】を持ってこい!と道を示すのは、首都圏近郊の山登り好きに、「そんなんじゃだめだ!登るならチョモランマだろ!!」と言っているように感じます。
利益最重視・収益最重視からシフトしつつ、環境や社会に配慮して行かないと、持続可能な世界にならないぞ!そのために、事業活動を見直すことが先ずは必要だ、という啓蒙と実行動を、それこそ世界的に実施する体制や仕組みの上で行うことが大切と思います。
大切な知見であり、個人も含めた多くの企業で必要ですが、知識をただ得ても結果にはつながりにくいと感じます。
知識から実現に向けた方策となる記事がこの先の回で出ると期待します。
SDGsはテーマが大きすぎて取り組み方が難しいので役員がバッヂつけるぐらいしかできないでしょうね。
反対に言うと「SDGsを推進!」と言っておけば耳触りも良いし、数値責任も問われないのでその辺りの距離感は日本企業には向いているのかもしれませんね。(嫌味)
ネスレ同様にグローバルでCSVに立ち向かえるのは日本ではトヨタぐらい(ネームバリューとしてSONYもあり)しかできないと思いますので、地元企業として期待しています。