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第6回は日本に伝わっていないベンチャー投資、シリコンバレーの特性についてです。この知識がないと、簡単に誤解してしまいます。特に、イノベーションブームによって、雨後の筍の如くVCが設立されています。リスクマネー全体が増えることは良いことなのですが、私が危惧するのは、目利きができる人が少ない一社に投資をしてしまい、目的としていた協業がなかなか成果が出ず、VC業界、シリコンバレー全体に否定的、恐怖症になってしまうことです。特にこのコロナの時期に。必ず2社以上に出資をして比較できるようにするべきです。地方の企業や若手ほど「シリコンバレー/VCが来てくれた、話してくれた」と舞い上がってしまいますので、必ず複数社に。一番大事なのは、すでにそのVC「に」出資をしている企業に話を聞いて、成果が上がっているかどうかです。まともなところならば喜んで紹介してくれるでしょう。

ミクロ経済学を少し知っている方はお気づきだと思いますが、新しい業界では「市場の失敗」が簡単に起こります。特にこの場合は「VC業界」、「シリコンバレーという外国」という二重に情報の非対称性があり、大企業が騙されやすくなってしまいます。必ず信頼できる(グルではなさそうな)同業界、同じ地域の人に評判を確認してください。 VCを設立すること自体は簡単ですし、海外の投資も数だけならこなすのは簡単です。ただ、その案件は本当に出資可能な中でトップ企業なのか。たまたま回ってきたところにばかり出資し、いくらサポートしてもその分野で大きくならないかもしれません。

大事なのは、その人に本当に投資経験や、再現性のある能力(起業家をサポートできる能力、人脈、経歴)があるかです。これは、その投資家が出資したとされる起業家に聞けば、すぐにわかります。「お金は出してくれたけど……」というケースがあるわけです。特に金融の経験がない人は、現代ポートフォリオ理論の理解などがないため、流動性や投資サイズなどを無視して、自分のリターンを過度に広告しがちな場合があります。かといってガチガチの金融だけの経歴だと、テクノロジーの理解がなかったりと、バランスがとても大事です。VCは1回の投資で10年も固定され、因果関係もわかりづらいです。いずれ、20年後にはバランスの無い人は淘汰されるという見方もありますが、日本はその20年を無駄にしている時間はないと思います。
因果関係と相関関係の違いはビジネススクールのいろはですが、失うもののない泡沫評論家ほどとんでもないことを言い、たまたま当たると(株価の暴落とか)いかにもすごい洞察力があったかのように振る舞う(しかしその後は全くダメ)という研究もあります。

知人のPEの代表も言っていましたが、「人の目利き」は本当に難しいと思います。ただ、スタートアップもそうですが、「成功」はわからなくても、「これはダメ」がわかれば、結果として成功率は上がることも確かです。
DNX Venturesのインダストリー パートナー、山本康正氏の連載第6回です。
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京大、東大、ハーバード、三菱東京UFJ銀行、ニューヨーク、グーグル、シリコンバレー、ベンチャーキャピタル……。DNX Venturesのインダストリー パートナー、山本康正氏の略歴には多様なキーワードが並ぶ。

しかし、その軌跡に目を凝らすと、単なるエリートとは違う「意志」が透けて見えるはずだ。その意志とは、「理系と文系」「民間と政府」「日本とシリコンバレー」など異なる分野の架け橋になりたい、というもの。異なる分野をつなぐには、広く、かつ深い知識を学ばねばならない。

キャリアを進めるたびに未知の世界へ飛び込んでいく山本氏の軌跡を追いつつ、働くうえで大事にしている「仕事の哲学」を聞いた。(全7回)

■第1回 最新テクノロジーの知識がなければもう成長できない
■第2回 何をするにも「お金」の勉強をしないと話にならない
■第3回 先を読み、「10年後」を考えて動く
■第4回 いい情報はオープンではない。自分から取りに行け
■第5回 人間は環境の動物。自分が伸びる場所に身を置こう
■第6回 シリコンバレーのVCは日本企業をどう見ているか
■第7回 これから勉強すべき「4つの知識」
日本の大企業がシリコンバレーにオフィスを設け、スタートアップとのアライアンスを模索しようが、シリコンバレーのVC経由で同様のアプローチをしようが、現地から投げられる速球を受けられるキャッチャーが日本サイドにいないと、何もハプンせず、現地から相手にされなくなります。前者の場合は現地メンバーはやる気をなくし、自分の存在価値を過小評価したり、本社に対する不満が募り現地の他社に転職したりします。また、後者はさすがに顧客である日本企業を切り捨てはしませんが、その会社の文化改革まで本気で手を染める意欲のあるVCはさすがになく、業を煮やして匙を投げます。

恐らくそんな調子が20年以上続いているのではないでしょうか。更にそれが大企業から中堅企業に移ってきて、同じことが繰り返されているのではないかと思います。さすがに、その事実を反省した大企業も多く、シリコンバレーのエコシステムに順応している企業も増えてきたのが、最近5年強ではないでしょうか。

経済状況が悪化している現状、現地に作った基盤の維持コストを問題視する企業も出てくるかもしれません。作るのは大変でも失うのはあっという間です。我慢のしどころです。
この連載について
ビジネスや働き方が多様化し、正解がない時代に、自分を信じて一心に仕事をする人たちがいる。そこにあるのは独自の「哲学」だ。仕事人のヒストリーをたどり、道標となった哲学を浮き彫りにしていく。