この連載について
ビジネスや働き方が多様化し、正解がない時代に、自分を信じて一心に仕事をする人たちがいる。そこにあるのは独自の「哲学」だ。仕事人のヒストリーをたどり、道標となった哲学を浮き彫りにしていく。
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だからこそ、優先順位を正しく把握し、社員個々人で見ると正しくなくても、全体として整合がとれるようにすることは必要だし重要。メルマガの例がそれを端的に示していると思う。
「気遣いファースト」については、年次構造が社内にあったり、対立回避優先だとそうなりがちだと思う。気遣いは仕事が協力して進めるという点では重要。でも資源配分や優先順位がかかわる意思決定ではユーザー・コトが優先に立っていなければ、それを優先している競合に負ける。
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高級ホテル・旅館やレストランの予約サービスを展開する一休は1998年に設立され、この分野の草分けとして成長。競合激化などにより一時低迷するも、ロイヤルカスタマーに特化し、ユーザーファーストを徹底することで、2012年から再び右肩上がりで業績を伸ばす。
それに一役買ったのは、2012年にコンサルティング会社から派遣され同社の経営に携わり、現在社長を務める榊淳氏だ。メガバンク時代は金融工学を駆使し、デリバティブ取引などのプライシングを担い、その後、スタンフォード大学大学院でコンピューターサイエンスを学ぶ。ボストン コンサルティング グループを経て、経営コンサルタントとして出合ったのが、一休だ。
社長業は週1日。週4日はデータサイエンティストとして、データ分析やコーディングなど社員業に従事するという変わり種。いかに同社を再成長へと導いたのか。バックグラウンドを振り返りつつ、その独自の経営スタイルを紹介する。(全7回)
■第1回 社長業3割、データサイエンティスト7割
■第2回 メガバンクで興奮した最先端の金融理論
■第3回 ニューヨーク転勤、仕事さえできれば認められる
■第4回 ボストン コンサルティングで鍛えた「思考力」
■第5回 低迷していた一休を再成長させた「100の打ち手」
■第6回 ユーザーへの提供価値を最大化するベストな方法
■第7回 問題解決に役立つ「データ分析」の方法
物事の優先順位を決め、その軸に沿って必要な行動を都度判断し、実行していく。この事自体は、一見すると画期的なアイデアではないし、真新しい印象はないかもしれません。この記事で述べれられていることは、表面的に読むならばそういう普通のことを言っているように見えるかもしれない。
しかし、それならば、なぜそれが難しいのか。
実際にその原則論のようなことを実践する上では、様々なダイナミズムがあるためるため、困難を極めるのです。
例えば、顧客ファーストで考える、ということについて。顧客を誰に置くのか、というのは、実際は議論が分かれるし、なんとなく利用者ではなく、営業先を想定してもおかしくはありません。さらには、記事中にもあるように、数字への短期的なニーズが生じるケースも少なくないでしょう。
こういうダイナミズムが働くことに適応しつづけると、組織の原則そのものが変質していきます。これは、かつて1950年代の組織論でフィリップ・セルズニックという人が語った「制度化」というもので、組織は生存のために必要な環境適応を繰り返すことで、段々と元々のやろうとしていたことから、目的がドリフトしていく、ということを述べていますが、そういうことが組織では日常的に起きています。
ある意味で、短期的であっても環境適応なのだから、つまり、仕入先の企業の言うことなのだから、それに適応することは正しい、という論理も成り立ちえます。このときに、どうやってもう一度、エンドユーザーを軸に(誰がエンドユーザーなのかということについても見据えながら)、ビジネスを立て直「し続ける」のか、ということが大事なのだということが、この記事からは伝わってくるのです。
つまり、一度組織を正しく設計すればうまくいくなどということはない、ということ、そして、様々な力学が日々作用して組織は目的のドリフトを余儀なくされるということ、その中でも、顧客は誰なのか、ということを常に再創造し続け、それに基づいて適切な行動を行うこと、そうしたことの裏付けや思考の手がかりとしてデータの収集と分析を怠らないこと。
これら非常に重要な要因を実践「し続ける」ことの大事さを感じさせてくれる内容でした。
その視点に沿っていなければ数字合わせはしない、
そのためにデータで考えていく、でしょうか
昨今のSDGsの潮流といささか逆流してる気もする。