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不真面目だったユニクロの柳井正社長がやる気になった理由とは?

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第192回
洋服屋

※写真はイメージです

 ユニクロの柳井正社長は、もともと勉強や仕事に対して熱心ではありませんでした。彼は著書『一勝九敗』(新潮社)で、大学時代について「映画やパチンコ、マージャンでブラブラしていた四年間だった」と振り返っています。  またジャスコ(現イオン)の紳士服売り場で働いてた時についても、「仕事そのものが面白くなく、『こんなことをしていていいのかな』と思ったり、かといって『これをやりたい』という明確な意思も無く、どうしても仕事を真剣にやってみようという気が起きなかった」と振り返っています。  そんな彼がどうしてユニクロを世界的な企業に成長させるまで熱心に働くようになったのか。人間の変化には決断があり、決断には人物の影響があります。「あの時、あの人が、ああ言ったから。だから自分はこうするんだ」ということがあって、人は何かを決断します。柳井正に影響を与えたのは、彼の父親である柳井等です。  柳井等はユニクロの前身である『小郡商事』の創業者です。彼は紳士服店とカジュアルウェア店を営み、同時にまったく畑の異なる建設会社を経営していました。その建設会社の仕事が忙しかったためか、ジャスコをやめて小郡商事に入社した柳井にあれこれ指示することはありませんでした。  その結果、柳井はジャスコ時代の経験を生かして自分で模索しながら、働いていました。そんな彼にある日、転機が訪れます。父親から会社の実印と通帳を渡されたのです。  この時の心情を、彼は「覚悟」と表現しています。「実印を預かった瞬間『もう後戻りできない。任せられたら、絶対に失敗できない。ここで頑張らなければ』と腹を決めることができた」という思考はまさに決断そのものです。  それ以来、彼は熱心に働くようになりました。入社した時に6人いた従業員は、自分と後に監査役となる浦利治だけになっており、二人で仕入れ、品出し、在庫の整理、接客販売、経理、掃除をしたと言います。ブラブラしていた大学時代や、真剣でなかったサラリーマン時代とは雲泥の差です。  人は口先だけで「明日から頑張る」と言っても、実際にはなかなか頑張れません。三日坊主という言葉の通り、二日三日はできたとしても三ヶ月以上続くことは滅多にありません。
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理屈や理論ではモチベーションにはならない
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