【上田岳弘】僕を形作ってきた読書による教養
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作家兼IT企業役員の上田岳弘氏の連載第6回をお送りします。
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芥川賞作家の上田岳弘氏は、実は経営者でもある。大学卒業後、法人向けソリューションメーカーの立ち上げに参加し、その後役員となった。言うまでもなく、作家も経営者も片手間にできる仕事ではない。
作家として食べていけるようになったいまでも、上田氏が会社経営から退かない理由は何か。そもそも、なぜ兼業が可能なのか。その生き方と仕事術を聞いた。
SF的と評されることの多い作風だが、コロナ後の世界をどう予測しているのか、作家の発想と世界観にも迫る。(全7回)
■第1回 作家とIT企業役員を「兼業」する理由
■第2回 経営と作家を「両立」する「引き算」の仕事術
■第3回 作家になるための修行「3ステップ」
■第4回 2020年は来なかった。コロナ後、小説はどう変わる?
■第5回 「兼業」は周囲に「公言」したほうがうまくいく
■第6回 僕を形作ってきた読書による教養
■第7回 ブロックチェーンは国家に代わって暴力の抑止力になる“読書を通して「声の多様性」を増やすことが本当の教養になる”
読書による「他者の追体験」や「考えを知ること」は、自分とは違うパターンや思考を浴び続ける経験である。読書の中に自分を投影していくことで、いろいろな視点が自分の中に蓄積されることが読書の魅力であるとの意見は得心する。
読書の目的として「声の多様性の蓄積」も意識していこう。読書により教養を備えることは、自身に様々な視点をもたらしてくれて、自分とは違うレンズをもたらしてくれますね。自身の考えとギャップがある時は違うレンズから覗いていますし、知らなかったことを読書から獲得することで、読書をする前と読書をした後では、確実に自身の知識の拡がりが生まれています。
例えば、「あの本で得た知識がここでつながってくるか」「あの本とこの本に共通点やつながりがあるではないか」といったことがあります。そういったところから、徐々に自身の判断軸や本質に近づいていくみたいな感覚があります。そのようなインプットを通して、自分なりの解釈や判断軸をもって工夫して実行(アウトプット)することで、はじめて自身の知恵になるのではと考えています。
羽生善治九段の有名な名言を引用するなら、
三流は人の話を聞かない。
二流は人の話を聞く。
一流は人の話を聞いて実行する。
超一流は人の話を聞いて工夫する。
読書は著者の話を聞いているのと同じですよね。自身はどこまでこの言葉を実践できているのか日々の指針として受け止めています。