ＷＨＯ、臨床試験で抗マラリア薬の使用再開発表
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最近、このヒドロキシクロロキンの研究だけでなく大きな疑義が提起されています。
LancetやNEJMの研究に関与したデータ管理会社Surgisphere社が『架空会社』なのではないかという疑いです。
https://www.theguardian.com/world/2020/jun/03/covid-19-surgisphere-who-world-health-organization-hydroxychloroquine?CMP=share_btn_tw
James Todaro氏の論考があります。
Lancetにおけるヒドロキシクロロキンの研究は、北米における63,315人の入院COVID-19患者を検討していますが、その時点までの米国、カナダ、メキシコでのCOVID-19による入院の合計は67,000人であり、ほぼすべての患者を登録しなければならないということになってしまうというものです。
https://twitter.com/JamesTodaroMD/status/1266108861259210753
このSurgisphere社の活動実績も疑われており、万が一架空会社とすると…多くの論文・研究が振り出しに戻ってしまうという恐ろしい事態になります。
注目すべき状況と思います。もちろん出処に関する確からしさには眉唾ですが、入院数などの考察には説得力があります。LancetやNEJMを信頼はしたいのですが…経過を見守らなければならないようです。
※初稿でヒドロキシクロロキンの薬品名を間違えていました。
修正いたします😌ヒドロキシクロロキンの治療としての有効性を示すために、バイアスの可能性を十分取り除くことのできたランダム化比較試験というのはこれまで行われておらず、それが行われるまでは、有効かどうかは「分からない」というしかありません。
ヒドロキシクロロキンが無効かもしれないというのは、主に観察研究の結果をもとにした考察です。この結果は、副作用リスクも懸念される中、臨床試験の外側で、現場で使用することを躊躇させるには十分かもしれませんが、わからないことを示すための臨床試験が行われることを阻むものではありません。
なお、トランプ大統領が服用していたと言われる「予防」的な投薬については、昨日NEJM誌にランダム化比較試験の結果が報告されましたが、残念ながら有効性を示すことができませんでした。ただし、こちらもあくまで「予防」の効果を示したものであり、「治療」の効果を評価したものではないということにも注意が必要です。
引用文献：https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2016638?query=featured_homeこれの経緯は以下のとおりです：
1. ヒドロキシクロロキンが効くかもと噂され（小規模な研究で示唆され）、一部WHO主導でたくさんのランダム化試験が組まれ、始まった（効くという証明にはランダム化試験が必要）。
2. Lancetという権威ある医学雑誌に、ヒドロキシクロロキンは効かないかも、という大規模な観察研究（ランダム化試験でない）が発表された（ブログで解説してます：https://riklog.com/paper-review/hydroxychloroquine-registry-lancet/）。
3. この研究は観察研究ながら信頼性が高いと判断され、効かない薬の証明に時間と金をかけるのは合理的でないと判断、WHO主導のランダム化試験が複数中止となった。
4. Lancetの論文は、実は用いたデータが捏造されていた可能性が指摘された（論文を細かく見ると変な部分がある）。実はデータ収集に一般企業が絡んでおり、その立ち回りや利益相反を含め現在調査中。
5. これをうけWHOが臨床試験の再開を発表した。
かなり大掛かりな論文捏造事件かもということです。
治療薬に関しては、レムデシビルがかなり効きそうなので、必ずしもヒドロキシクロロキンに拘る必要はなさそうです（当然色々オプションがあった方がよいですが）。
