新型コロナで変わる就活 WEB面接のみで内定4割 NHK調査

新型コロナで変わる就活 WEB面接のみで内定4割 NHK調査
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来年春に卒業する大学生などを対象にした採用面接が1日から本格化します。NHKが国内の大手企業を対象にアンケートを行った結果、9割の企業がウェブでの面接を実施すると答え、このうち4割がウェブ面接のみで内定を出すと回答しました。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、対面が中心だった採用面接は様変わりすることになりそうです。
NHKは先月19日から29日にかけて、国内の製造業や小売、金融など幅広い業種の大手企業、100社を対象にきょうから本格化する採用面接の考え方など、おおよその傾向を知るためアンケートを行いました。

このうち、ことしの採用面接をウェブを活用して行うかどうか尋ねたところ、「行う」が94.7%と最も多く、「検討中」は1.1%、「行わない」はゼロでした。無回答は4.3%でした。

さらに、ウェブの面接だけで内定を出すかどうか尋ねたところ、「内定する」が44.9%と最も多く、次いで「検討中」が42.7%、「ウェブのみでは内定しない」が10.1%でした。無回答は2.2%でした。

企業の採用面接は、これまで対面での面接が中心でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、様変わりすることになりそうです。

一方、ことしの採用活動を巡っては、運休や減便が続く大手航空会社が活動を一時中断するなどの動きも出ています。

アンケートで、来年春卒業する大学生などの採用予定数を見直すかどうか尋ねたところ、「当初の計画どおり」が68.1%、次いで「まだ決めていない・検討中」が16%、「減らす見込み」が10.6%で「増やす見込み」はゼロでした。無回答は5.3%でした。

WEB面接実施の企業は

大手商社の三菱商事は、ことし初めて最終以外の面接をウェブで実施することにしました。

会社ではウェブでのやり取りでも、論理的な思考ができているかや、コミュニケーションの能力を見ることは可能だと考えています。

ただ、対面式の面接に比べ、学生の話し方や雰囲気を把握するのは難しくなる可能性もあることから、リラックスして面接に臨んでもらうため、始まる前に雑談の時間を設けるといった工夫を行うことにしています。

中川剛之 採用チームリーダーは「採用する側もウェブ面接は初めての経験で緊張している。対面での面接同様に、これまで取り組んできたことややってみたい仕事など、これまでと変わらない質問でのやり取りになると思う。いわば、ホームグラウンドの自宅から面接に参加する人もいると思うので落ち着いて参加してほしい」と話しています。

航空業界志望する学生は

新型コロナウイルスの感染拡大が企業の採用計画にも影響を及ぼす中、これまで続けてきた就職活動の軌道修正を迫られる学生もいます。

都内の大学に通う4年生の井元和輝さんは、航空業界を第1希望に就職活動を続けてきました。客室乗務員を夢みて航空会社の説明会への参加やOB訪問を繰り返すとともに、ことしの1月からは専門の塾に通って、乗務員に欠かせない細かな所作なども学んできました。

しかし、エントリーシートを提出し、書類選考の結果を待っていた5月になって、グループの3社に応募していたANAホールディングスから採用活動を一時中断すると連絡が入りました。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた移動の自粛などの影響で、事業計画の策定が困難になったというのが理由です。

その後も、スカイマークに日本航空と、採用活動の中断が相次ぎ、井元さんは、これまでの就職活動を軌道修正する必要性を感じているといいます。

井元さんは「採用人数が減るかもしれないとは思っていたが、中断されるとは思わなかった。いつ始まるのかもわからず、先が見えないので不安な気持ちが強い。ことし中に決めたいと思っているので、航空業界だけという訳にはいかなくなってしまった」と話していました。

井元さんは、今、活動の範囲をほかの業界にも広げようと、インターネットや友人を通じて、採用計画のある企業の情報集めを急いでいます。

ただ、新型コロナウイルスの影響で企業の合同説明会が中止になり、OB訪問もできない中、限られた時間で、自分に合った企業を探し出せるのか不安も感じているといいます。

井元さんは、「業種を絞って準備をしていたので悔しい気持ちはある。ただ、こういう機会だからこそ、企業のいろいろな面が見えると思うので、学んできたことを生かして今から頑張っていきたい」と話していました。

専門家「採用人数の今後に注意」

大手企業の多くがウェブでの面接を予定していることについて、就職情報会社「ディスコ」の武井房子上席研究員は、「企業、学生ともに雰囲気をつかみづらい面があると思う。新卒者の採用は、仕事のスキルと言うよりは人物重視で評価するものなので雰囲気がつかめないと、どうしても難しい面が出てくるかもしれない。もし、お互いの理解が深まらないまま『内定』となった場合、ミスマッチが生じて、入社後の早期離職につながるおそれもある」と指摘しています。

そのうえで学生に対しては「企業側もウェブ面接に決してなれているわけではないと思って、お互いさまという気持ちで冷静に対処してほしい。うまく言えなかったとか、ちょっとした失敗は気にせず、採用担当者は、大きな視点で学生を見ようとしているということを念頭において面接に臨んでほしい」とアドバイスしています。

一方、新型コロナウイルスの感染拡大が企業の採用計画に与える影響について、武井上席研究員は「業績の悪化を受けて採用人数を縮小するという動きも出てきている。業績への影響がまだはっきりしない中、採用人数が今後どうなるか注意して見る必要がある」と話しています。