欧州委、約90兆円の景気刺激策を提案-共同債で資金調達へ
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非常に欧州らしい着地です。経緯を整理しておきます。まず4月時点では1兆ユーロという規模が報じられていましたが、これは全くまとまらず破談しました。その後、独仏共同提案という格好で「融資ではなく補助金」、つまり返さなくて良いというイタリアやスペインが望む格好での共同基金という話になりました。しかし、その代わり規模は5000億ユーロに半減されました。また、それでもオランダやアイルランド、バルト三国はこれを飲めません。補助金ではなく融資だ、という立場だからです。
そして今回の欧州委員会の提案です。7500億ユーロは過去2か月で報じられていた額の中間であり、また、形式に関しても、2500億ユーロを融資、5000億ユーロを補助金(記事では助成金)とする折衷案となりました。そして共同債の返済も「皆で」とあります。今後はその割合が注目でしょう。
しかし、話はこれで終わりません。本当に決まるかどうかは6/18のEU首脳会議です。ここまで整理して初めて意味ができるニュースとなります。費用は共通債の発行で賄い、それを2028年から最長30年で返済ということだが、加盟国に新たな負担を強いるのではなく、大企業に対するデジタル課税や環境課税などで対応するという目論見らしい。それでも、オランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデンは、新型コロナウィルスで被害を受けた国への支援は貸与のみに限定すべきだと主張しており、27ヶ国の合意はこれからだ。
もう決着したかのように受け止められている方もおられますが、あくまで「たたき台」であることに注意が必要です。これから27加盟国が全会一致で合意する必要があり、今後の協議で基金の規模、特に補助金の枠(5000億ユーロ)が動く可能性もあります。
協議の場は6/19のEU首脳会議。着地点は財政規律を重視する北部欧州の「倹約4カ国」(オーストリア、デンマーク、オランダ、スウェーデン)の動きがカギになります。有事とはいえ簡単に譲歩はしないでしょう。EU首脳が夜を徹して数十時間のマラソン会議を行うのは珍しいことではありません。
今回の基金は2021年以降のEU中期予算に組み込まれているので、実際に支援が始まるのは来年以降になります。年内の緊急支援は既に加盟国が合意している5400億ユーロ規模の別のパッケージからまかなわれます。