【核心】米中対立に翻弄される「香港の自由」の危機
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香港は、中国にとって、「金の卵を産むニワトリ」のはずでした。香港の自治を維持しておけば、世界的な金融センターとして投資が集まり、その投資は中国全体に融資されて、経済成長に大きく資する、という価値があるはずでした。実際、そうやって、深圳も、もっと大きくいえば上海や広州もここまで発展してきました。
その「金の卵を産むニワトリ」を、中国政府はなぜ今、絞め殺すのか、ここがわかりにくいところです。確かに米中対立は深刻化しており、ファウェイ社などにあの手この手の制裁を仕掛け、中国の主要な企業を潰そうとしています。新型コロナウィルスの感染については、米国政府の要人が、中国が悪者であるかのような発言を執拗に繰り返しました。
しかし、だからといって、香港が血祭りに上げられる、というのは、理屈に合わないし、中国の利益になるとも思えません。香港の自治と経済を絞め殺しても、実のところ、米国政府には何の打撃にもならないので、米国への報復にはなりえません。
筋の通る理由を考えてみると、
① 中国政府は香港は不要になったと考えている
② 香港の自治というのは、経済を犠牲にしてでも潰さなければいけないほど、中国政府にとって危険なものである
といったところが考えられます。
①で、香港を経由しなくても、たとえば上海の株式市場などに十分な投資が世界中から集まる、と考えているなら、楽観的に過ぎるでしょう。
②で、香港の自治が、中国共産党の統治全体を脅かすと考えているなら、それは自信のなさの現れでしょう。
とにかく、中国政府は、経済的な利益にはならないことを、イデオロギー、もしくは統治体制の維持のために強行しようとしているといえます。これは、習近平体制の特徴であるともいえます。
元来、中国政府としては、香港のような自治などなくても豊かになれる、上海や北京を見ればいい、と、実例を見せることで、香港や台湾、諸外国に共産党の統治体制の優位を示すのが、最も賢いやり方のはずでした。そのやり方はもうできない、と考えているならば、むしろ守りに入ったということでしょう。新型コロナウイルスを受けて、どんな経済政策が飛び出すのかと期待されていた全人代ですが、話題になったのは香港との一国二制度を根本から揺るがしかねない「香港国家安全法」でした。
現状、香港国家安全法は7条の内容が示されているだけで、全容は明らかになっていません。
28日、全人代で制定の方針が採決されました。「国家安全法」の経緯、問題点、そして今後の香港の一国二制度について、香港情勢に詳しい、遊川和郎・亜細亜大学アジア研究所教授に解説していただきました。
今後の米中対立、中国企業、米大統領選にも関わる重要トピックスです。ぜひご覧ください。
<追記>
27日、米国務省が香港は自治を失ったと判断を下しました。今後、制裁が加えられ、香港の関税などでの優遇がなくなる可能性が高いです。香港の「画像で明らかに確認できる事実」として、周庭さんのこのツイートは、一度見ておかなければならないと思います。
危険な行為をしたとは全く思われない「制服を着た中学生女の子」を連行したり、柵に座って全く何もしていなかった男子が10人くらいの武警に囲まれて捕らえられたり...という状況であり、心が痛みます。
https://twitter.com/chowtingagnes/status/1265636866486710272