アビガン「5月中承認」は見送り 来月以降も治験継続と厚労相
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アビガンの臨床研究に関しては、藤田医科大学が中心となり、軽症者や無症状感染者を対象にアビガンの有効性を確認する臨床試験を行っている最中です。80人程度の患者数見込んでおり、先日40人の段階での中間解析の結果が発表され、「アビガンの有効性確認できず」という趣旨で報道がされましたが、「あくまで中間報告でありアビガンの有効性を否定するものではない」と藤田医科大学が訂正する記者会見を行っています。
これ以外にも観察研究など複数行われていますので、それらの結果を待った上で、科学的根拠に基づいた決定を行うべきだと思います。承認を受けたレムデシビルとの立ち位置の違いをかいつまんでご説明します。
薬の有効性を証明するための理想的な試験デザインは、偽薬を用いて患者さんや医師がその薬を飲んでいるか飲んでいないかを分からなくした(これを盲検化と呼びます)ランダム化比較試験です。このような取り組みにより、多くのバイアスを取り除くことができます。
レムデシビル(ベクルリー)も十分にその有効性を示すことができているというわけではないですが、少なくとも、この偽薬を用いた大規模なランダム化比較試験がすでに行われており、中間報告の時点で「症状回復までの時間が短い」ことが示されています。本来致死率の改善が示されるのが理想的ですが、これについては、最終の試験結果を待っている状況です。
一方のファビピラビル(アビガン)については、少なくとも二つの試験が報告されていますが、バイアスを取り除くためのランダム化がされていなかったり、偽薬ではなく別の薬を対照に置いていたりするため、純粋なアビガンの効果を証明するための試験になっていません。また、一方の試験では対照群と同等の回復率になるなど、効果自体も不透明です。ゆえに、アビガンが有効かどうかは「まだ分からない」ということになります。
これについては、国内で行われている臨床試験の結果待ちという状況で、レムデシビルの存在や、国内の感染者数の減少傾向などから「緊急性」が下がったことも含めれば、今月中の承認というのは難しいということになります。