ネット診療、世界で拡大 米英中は保険適用
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私は以前よりニューヨークとニュージャージーにオフィスを構えて精神科の対面診療を行う傍ら、メンタルヘルス過疎地であるテキサス、ジョージアにお住まいの患者さんに対しネットのビデオ通話を用いた遠隔診療を行なっていました。
最近では、コロナウイルスのパンデミックに伴うロックダウンのためニューヨーク、ニュージャージーにお住まいの方も通院が困難になったことから、ロックダウン中はニューヨーク、ニュージャージーの患者さんも大半を遠隔診療に切り替えて対応しています。
精神科は身体診察が必須ではないため、遠隔診療との親和性が高いこともあり、米国では既に数年前からネット診療が普及していました。米国は医師法が州ごとに独立して制定されているため、州により遠隔診療の扱いも異なりますが、Telemedicine Parity Law (遠隔診療同等法)がある州では、保険会社に対して対面診療と同等の診療報酬を支払うように定められています。
遠隔診療は診療へのアクセスの敷居を下げるという意味では大きなメリットがあります。一方で、身体診察の必要がない精神科においても、対面診療でしか得られない非言語的な情報やコミュニケーションは診療において非常に重要です。遠隔診療ではこうした情報やコミュニケーションが得られないというデメリットもあります。遠隔診療は決して万能ではないことに留意し、メリット、デメリットを天秤にかけて利用していくことが大事だと思います。州によっても異なるようですが、米国では、ビデオ受診には通常の受診と同じ診療報酬が認められた一方、電話再診には低めの診療報酬が設定されているという地域も多いようです。
理に適っているようにも思えるのですが、結果として医療機関は電話再診を断ってビデオ受診だけを受け付けるようになり、ITリテラシーが不十分で、感染リスクも高い高齢者だけが受診を強いられるという状況が報告されています。
あるいは、血液検査は自宅近くの検査室でというような誘導も準備されていますが、異なるシステムを使っており、院内ならワンクリックだったところが、FAXや電話確認など、余計にペーパーワークが増えているという事例もあります。
また、電話再診を行う日常が来て医師として感じるのは、思っていた以上にface to faceで得られる情報が多かったということです。あるいは、血圧を自宅では測定していない、など個々の事情で十分な評価ができないこともあります。
これらは少しずつ改善していけば良いわけですが、ネット診療ならではの問題点も浮き彫りになっており、現状では手放しに称賛できる状況にはないかもしれません。アレルギー持ちの私も【2ヶ月に一度、同じ薬をもらうために1〜2時間並んで同じ診察を聞いて処方箋をもらい、さらに薬局で30分ほど並んで薬をもらう】
という、どう考えても効率的にはオンラインで全て完結する事をやっています。
コロナが与えてくれたデジタルシフトの最後のチャンス。
数多くのステークホルダーの事情はあれど、【オンラインにするためにどうするか】ではなく【オンライン前提で、より良い社会を創っていくためにどうするか】という所に思考を集中させたいですね。