教育とICT

文科省が学校の情報環境整備に関する説明会をYoutube Liveで行い、この事態にあって抵抗する自治体と学校に大いなる苦言を呈したことが賛否両論を巻き起こしているそうです。

個人的にはICT環境整備云々というよりは「調べて集める・まとめる・伝える」というチカラを子ども達がつけるために必須となるであろう情報ツールについて、まるで現実を無視するかのように排除しようとする勢力があるのを、自分が教育委員会で教育用PC・インフラ整備担当をしていた時からかれこれ15年近く見聞きしてうんざりしていたので、まぁそれくらい言って当然だよなと思って聞いていましたが、世の中にある否定的な意見を見る限り
金も出さないのに偉そうなこと言うな
ってのが多い印象を受けました。(当然ご意見の全てを見たわけではございません)

ってことで、我が地元・横浜市を例に教育ICT環境整備にどのようなお金がついているのかまとめてみました。
まず、横浜市の令和2年度当初予算額のうち教育用コンピュータ整備とICT支援員派遣事業の予算は1,259,523,000円です。(以下リンクはタイトル未設定と出ていますが、令和2年度横浜市教委予算概要です。)

これに対して文科省からは地方交付税措置という形で都道府県&市町村に財源が配分されます。
なんだそれで整備すればいいじゃんと思いきや、そうは問屋が卸さない構造になっておりまして、この地方交付税は紐付きの補助金と違って使い道は各団体に任されているため、実際それを教育ICT予算として使うためには、各市町村の中で熾烈な予算要求の末に予算を勝ち取るをことが必要となります。

学校におけるICT環境整備に必要な経費が地方交付税に位置づけられているということは、それが、どの地域に住む国民にも一定の水準が維持されなければならない行政サービスの一つであると理解する必要がある。地方交付税はこうした標準的な行政サービスとは何かを考えたときの経費を積算根拠として算定されるが、その使途は地方公共団体の自主的な判断に任せられている。つまり、地方交付税の積算上は教育の情報化に必要な経費として算定され地方公共団体に交付されるが、教育の情報化以外の使途にも充てることができる財源として扱われる。(一般財源)

実際どれくらい各自治体に配分されているのかは資料がないのでわからないのですが、文科省から出されている資料にはこんな感じで書かれています。(出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/04/06/1403502_1.pdf)

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ちなみに横浜市には現在小学校が340校、中学校が145校ありますが、以下の資料によれば、現在の整備台数は以下のとおりです。(またタイトル未設定ですが「令和元年度包括外部監査の結果に関する報告書」となります。)

上記資料の44ページより。

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私の方からは基礎的な数値データのご提示のみで、これらをどう判断するかについては、私の駄文をお読みになっている方達の情報分析能力に委ねたいと思いますが、私の記憶する限りでは10年ほど前も年間10億円程度の予算がついていましたので、累積すれば相当な予算が使われているというのは間違いないということと、それだけ予算をかけてもこの新型コロナウイルスによる緊急事態宣言&外出自粛の状況にあって子ども達にオンラインでドリルひとつ送ることができない学校が全国に多々あるということは確実に言えると思います。

先の文科省の説明会で言われていた「この非常時にさえICTを使わないのなぜ?」という点に関しては「日常的に使ってないものが非常時に使えるわけねーだろ」と言わせていただきたいですが、

現場の職員の取り組みをつぶさないでくれ
これからはICTを使わなかった自治体に説明責任が出てくる”
紙を配るんではなく、双方向での授業を学校現場に取り組んで頂く必要がある。
本当にできること、使えるものは何でも使って、できることから、できる人から、既存のルールに捉われず、臨機応変に何でも取り組んでおられますか?
ご対応いただきたい、じゃないですね。私たちですね、今、今日、この日に、学校のICT環境整備の担当になったんだから、やんなきゃいかんです。
やろうとしないということが一番子供に対して罪だと、私は思います。

という点については、個人的な経験からいっても100%同意するところです。
しかし今の段階で圧倒的に足りないのは現場を動かすための「体制・仕組み(ルール)・インセンティブ」だろうと思います。
実際、教員採用試験ではICT能力を問われることはないですし、募集や採用試験を行う側もICT音痴と来ていては話になりません。
学校で100時間以上PCを稼働させてなかったから爆発するということもないですし、積極的に授業でICTツールを使ったからと言って先生達のお給料が上がるとかいうこともありません。(むしろハードの障害対応に駆り出されて余計な仕事を増やすのがオチです。)
そもそも学校の先生達は慢性的に忙しいので、最初のトレーニングコストを払うところでつまづくという状況はわからなくもありません。

ICTツールというのは、辞書にもなり、鉛筆にもなり、スケッチブックにもなり、絵の具にもなり、カメラにもなり、編集機器にもなり、世界と繋がるツールにもなります。
これらを使いこなす能力は圧倒的に子どもの方が早く身につけるのは間違いありません。

でも、それらをどう「正しく使う」のかということについて教えることは、教育のプロである先生達にアドバンテージがあるのも間違いありません。

子ども達の世界を広げるために一歩を踏みだしてみてほしいと思います。