ホワイトハウス、職員のマスク着用義務付け 副大統領側近らの感染受け

Donald Trump

画像提供, Getty Images

米ホワイトハウスは11日、マイク・ペンス副大統領の側近らが新型コロナウイルスに感染したことを受け、職員に対し、大統領執務室があるホワイトハウスの執務棟ウェスト・ウィングにおけるマスク着用を命じた。

ホワイトハウスの人事室は、職員は自分のデスクにいる時や同僚から社会的距離を保っている場合を除き、常に顔を覆わなければならないとしている。

ホワイトハウス内部では、ドナルド・トランプ大統領の身の回りの世話をするスタッフ1人が新型ウイルスに感染。15日には、ペンス副大統領のケイティ・ミラー報道官と、その夫のスティーヴン・ミラー大統領補佐官(政策担当)の陽性が確認された。

トランプ大統領は、自分がマスク着用の方針を義務付けたと述べた。しかし11日、ホワイトハウスのローズ・ガーデンで記者会見したトランプ氏は、マスクを着けていなかった。

トランプ氏は、自分は常に「みんなから遠く離れている」ため、この指示に従う必要はないと主張した。

「ホワイトハウスには1日あたり数百人もの人が押し寄せている。(中略)我々は感染をうまく封じ込めていると思う」

また、ホワイトハウスで感染したのは「基本的に1人」で、接触者はウイルス検査で陰性だったとし、内部での感染拡大を重視する姿勢は示さなかった。

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ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策タスクフォースでは、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ博士ら3人が、新型ウイルス陽性と診断された人物と接触した可能性があることから2週間の自主隔離に入っている。

アメリカの感染症の第一人者のファウチ博士は、政府の新型ウイルス対策を主導してきた。

アメリカのウイルス検査

トランプ大統領は、各州でのウイルス検査の実施件数を増やすため追加資金を用意するつもりだと述べた。

米政府は今月、各州が検査目標を達成できるよう110億ドル(約1兆1800億円)の資金を投じる予定。5月中に何件のウイルス検査を実施したいのか各州に聞き取りをした上で、目標に見合った支援を提供するという。

トランプ氏と定期的に接触する機会のあるホワイトハウス高官は現在、毎日新型ウイルの検査を受けている。

すべてのアメリカ人が新型ウイルス検査を受けられるようになるのはいつ頃か、記者から重ねて質問されると、トランプ氏は「今すぐに検査を受けたい人がいるなら、検査は受けられるだろう」と答えた。この主張については、事実と異なると、激しい反発が起きている。

経済再開には90万件の検査が必要

トランプ氏は数週間にわたり、経済が悲惨な状況にあるなか職場に戻る時がきたと主張し、全米でロックダウン(都市封鎖)措置の緩和を促そうとしてきた。

しかし公衆衛生の専門家たちは、あまりに早期の規制緩和によって感染が再び拡大し、感染の第2波につながる可能性があると警告している。

米疾病対策センター(CDC)は、ひとつの地域の規制緩和について、14日間にわたり感染者数の減少がみられ、かつ住民1000人あたり30件のウイルス検査の実施が可能でない限り、ロックダウンは緩和すべきではないとするガイドラインを発表している。

慈善団体COVID追跡プロジェクトによると、アメリカでは5月第1週に、1日平均24万8000件の検査が実施されたという。

ホワイトハウスは、1日あたりの検査件数が30万件まで増えたとしている。しかし、著名な公衆衛生研究者たちは、アメリカの経済活動を再開する前に、1日に少なくとも90万件のウイルス検査を実施する必要があると指摘する。

今週までの時点で、アメリカでは約3億3000万人の人口のわずか2.75%しかウイルス検査を受けていない。ロックダウン措置を緩和しているテキサス、サウスカロライナ、アリゾナを含む十数の州では、ウイルス検査を受けた住民は2%以下にとどまっている。

ホワイトハウスは先週、経済活動再開にむけたCDCガイダンスを却下したが、一部の州はCDCの基準を採用している。

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<解説>ホワイトハウスすら安全ではない経済再開の行方は――アンソニー・ザーカー北米担当記者

トランプ大統領は今回の記者会見で、実施可能なウイルス検査件数が増加したと強調した。しかし話題が集中したのは、ホワイトハウスそのものでの感染拡大の状況だった。

先週ローズガーデンでイベントが開かれた際には、ペンス副大統領を含む参加者は誰1人マスクを着用していなかった。それから4日後、常にトランプ氏の側にいるはずのペンス氏の不在は、ことさら目を引いた。

ホワイトハウスが全職員のマスク着用を命令したため、この日の記者会見では、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問を含む全参加者がマスクを着用していた。全員というのは、トランプ氏を除く全員だ。

大統領は今なお、予防のためのマスクを着けようとしない。

マスクをしているスタッフと、マスクをしていない大統領の姿は、実に対照的だった。

マスクをしていないトランプ氏はこの日、経済活動の再開や社会的距離戦略の緩和を求める声が、国内に充満していると述べた。それと同時に、ホワイトハウスのスタッフを守る感染対策の仕組みが破綻したのではないかと言われると、これは否定した。

「ここは人の出入りが多い」とトランプ氏は述べた。「みんなして国を動かしているんだから」と。

これは、アメリカが今後直面する根本的な課題を浮き彫りにするやりとりだった。ホワイトハウスでさえ安全ではない状況で、はたしてアメリカ経済は活動を再開し回復することができるのだろうか。

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