米政府のギリアド新型コロナ薬治験、5月半ばに暫定結果の可能性
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今回のケースは既知の薬であり、安全性についてはある程度明らかになっている。よって効果がないプラセボ群を置くのは非人道的であり、本来なら候補薬同士で比較すべきと考える。
例えば参加者をランダムに2群に分け、片方はレムデシビル、もう片方はファビピラビル(アビガン)を投与する。そうすればそれぞれの薬の長所と短所がわかるため、臨床上どちらの薬を使うべきかはっきりするはずだ。
レムデシビルの試験にはアメリカ政府が関わっているようだが、この手の薬同士の比較をしないのは治療薬での主導権を他国に渡したくないという現れだろうか(邪推ではあるが)。
なお、製薬企業にも厳しい監視をしなければならないのはビッグ・ファーマ(篠原出版新書)やディオバン事件でも示されている。比較対照を置いたランダム化試験が必要だというのも、バイアスを入り込ませない為である。今回は金以上のことが関わっているために尚更情報の解釈に注意が必要である。レムデジビルの試験デザインに総じて言えることですが、「レムデジビル投与のタイミングが遅いかもしれない」ことは懸念材料です。
誤解のないよう説明を加えておきますが、これは仕方のないことでもあります。
前提として自然に治癒する病気でもある以上、軽症のまま治癒する患者さんに対して薬剤を投与する意義は小さく、副作用リスクが利点をはるかに上回る可能性が強く危惧されます。薬が害にしかならない可能性です。このため、薬を誰にでも投与すべしというような意見は現時点では暴論と思います。
言い換えれば、薬は重症化する患者さんに対して選択的に使用しないと真の臨床的有用性は発揮できない可能性が高いと考えられます。これは多くの病気に共通することです。
実際に、各試験では重症化した患者さんが選択されていますが、問題は、症状が出現する前の段階でウイルスの増幅がピークに達する可能性を指摘されていることです。
薬剤側からすれば、本来この時期に投与されるのが最も有効と考えられます。重症化「した」時には、免疫応答が起こっていて、すでにウイルスの増幅はピークをすぎたあと。薬剤は十分効果を発揮しにくいかもしれないのです。これは実際に多くの感染症に共通した真実です。
このため、本来であれば、重症化「する」患者さんだけを選択的に狙って、重症化の「前」に投与をすることが望ましいですが、この予測が立たないので、各試験が矛盾を抱えた中で行われています。
もちろん、既存の試験結果がポジティブなものであれば良いですが、このような理由から、各試験が仮に芳しくない結果に終わったとしても、アプローチをかえて再挑戦する価値があると言えます。
しかし、そこでの課題は、どのように重症化する患者さんを見つけ出し正確に予測するか、です。男性、高齢者、いくつかの持病などが危険因子として知られていますが、これらの組み合わせだけでは間違いが多く起こることも知られています。まだまだ明らかにすべきテーマは尽きません。