エンタメ界、「無観客ライブ」で乗り切れるか
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クラシックは、響きと倍音が大事です。ことに声楽は、マイクなしで2千席以上、3千席以上といった客席に、オーケストラを超えて響き渡る声の芸術です。このオケを超え、煩くなく響き渡る音は電気信号にそもそも載らない。それがマイクではない技術による声量のコントロールと相まって美しさを生むのが特徴です。だから同じ歌手でも録音を聞くのと生で聴くのとでは別人を聴いている程の差があります。
世界最大の動員数の歌劇場、ニューヨークのメトロポリタン・オペラは、世界中の映画館でオペラ作品を上演しています。この映像作品作りには1作品あたり上演にかかる数千万から数億のお金に加えて、9千万円〜1億1千万円の制作上映費用がかかっています。映像内では繰り返し「オペラは生で見るのが最高ですから良いなと思ったら近くの歌劇場に足を運んでください。」と言う。
電気信号に載せた瞬間に音を楽しむ音楽のキモである音が別のものになってしまうから、ライブで観るのと「違う価値」を上演にかかるお金に加えて「付け加える」費用がかかるわけです。それでもライブに適わない。ないので直接見に行ってねと言うのです。
クラシックは多くは昔作られた作品を上演するので、すでに一通りの映像や録音は存在する。どっちみち音楽の再現性は無いので、映像に凝らなければ差もつかない。その中で今、映像を作り込まずに無観客で配信するということは、ブランドの確立したカラスやパヴァロッティといった往年の名歌手の録音と同列に扱われることになる。
録音のたびにマイクにはオペラの歌い方はホント向いてないと実感します。ミュージカルなどのマイクに乗せることが前提の歌いの方がずっといい。そこまで違うのに無観客で配信で勝負してもねぇ…とは思いつつ、火を消さないためにオンラインでの試みはやっていくつもりですが、ライブとは全く別物で価値も減じちゃうからあまりお金も取れません。
早く上演できる日が来るように今は耐えるしかないでしょう。ただ多くの人がその間に生活が持たずに音楽をやめてしまい、コロナ後にかなり再編されることになるんじゃないかな。アメリカのオペラ団体の半分がなくなるとの予測もあります。日本の硬直化した団体を見ているとそれでも良いかもとも思う昨今でもありますが。まさに武井さんのコメントの通りで、バイオリンの演奏にしても、会場での(目には見えない)お客さんへの直接的な振動があるとないでは全然違うものになります。
さらに、オンライン配信で根本的に難しいのは、自宅で見る機材によって伝わるものが違うということ。ホームシアター+サラウンドスピーカーで聴いている方とスマホ画面+スマホスピーカーの方ではあまりにも体験が異なるので、音そのものへの価格づけというよりも、演者と視聴者とのインタラクションなど、よりパーソナライズされたものへの価格づけの方が大事になりそうです。問いのたて方としては、「無観客ライブで乗り切れるか」ではなく、
「Withコロナ」の状況において、どうやって価値を提供するのか。
社会に貢献するのか、あるいは、生き残るのか。
ではないかと思います。