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ここ最近、取締役会に参加して経営陣とディスカッションしたり、他の会社の経営者や資本市場関係者と情報交換をする中で、事業と資本市場の変節を感じます(私は今、プレーヤーとして業務執行に携わるのはひと休みしています)。
ですが、コロナ下であっても、バリュエーションのフレームワークは変わりません。なぜなら、世界の資本市場に参加する方々の99%は、本連載でディスカッションしてきたようなフレームワークで企業や事業の価値を考えるようにトレーニングを受けていて、その方々の考え方に変化があるのは(仮にあるとしても)相当の時間を要するからです。
コロナショックによるバリュエーションへの影響は、事業計画(販売単価予測、販売数量予測、設備投資計画、サプライチェーン・バリューチェーンの分断による影響など)、資本構成と資本コスト(リスクプレミアムの上昇、デット・エクイティ投資家のアピタイトの減少→資金繰り/資金計画への影響、レバレッジ水準の見直し)、永久成長率・マルチプルの下方修正などで、実務的には消化されていくのだと思います。
元は世界のパンデミックに端を発するものの、実務の世界は全ては個社ごとの個別事象の分析とステークホルダーとの交渉の積み上げで決まっていきます。今経営や金融実務に携わるプロフェッショナルは本当に大変な日々を送っています。そして、ここを生き残った会社や個人が次のサイクルでのリーダーになるのだと思っています。
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次回第4回(最終回)はSPEEDAアナリストの加藤じゅんさん(元UBS Global Asset Management→みさき投資)とのZoom対談メモです。
第2回で皆さまからコメント欄にていただいた質問にできる範囲で(私たちの分かる範囲 + 紙面のキャパ)お答えする予定です。ご質問をお送りいただいたピッカーの皆さま、どうもありがとうございました!
冒頭から記事とは逆になるのですが(汗)、自分はDCFも使いますが、マルチプル法中心です。
ただ、それは記事にもあるようにマルチプル法も根底に通じるものがあり、特に投資では横比較をすることが重要だからです。
そして記事やコラムで数式の割り算の思考実験がされています。これが本当に面白く重要で、もう少しやってみましょう。
簡易DCF法の
「NPV=FCF÷(WACC‐g)」
の両辺をFCFで割ると
「NPV÷FCF=1÷(WACC‐g)」
となります。仮定としてNPVに現在のEV・FCF・想定WACCを入れてみると、マーケットが期待する成長率gが逆算されます。
また
「PER=時価総額 ÷ 当期純利益」
ですが、その逆数(1÷PER)は益利回りと呼ばれます。利回りは投融資した資金への要求リターンで、一気に横比較しやすくなります。
例えばPER40倍の時は益利回りは1÷PER=1÷40=2.5%。そして株価は将来を見ます。時価総額40、当期利益1、また株の要求リターンを6%として、5年後の成長を織り込んで今の株価があるとします。5年後に益利回り=6%となるには、毎年の利益成長は19%求められます(以下)。この市場期待と、自分が予想する成長率やその前提・成長シナリオを比較して、投資を考えます。
・6%=5年後の利益÷時価総額40
・5年後の利益=6%×40=2.4
・利益成長率=(5年後の利益÷現在の利益)^(1/5) - 1 ≒19%
また記事に銀行のPBR / ROEの回帰分析の図があります。ROEが高いほどPBRも高くなりますが、これは
「ROE=当期利益÷株主資本=PBR÷PER」
と計算できるからです。
注目してほしいのは、PERが高い→PBRも高くないとROEが低い構造です。これまでにあったように、資本構成が適正になっていなければROEは上がりません。なので、ROEが低い=利益が大きくてもPBRが上がりにくいとも言えます。
なお、金融機関は金融危機で資本規制が厳しくなり、レバレッジを効かせられなくなり、PBRも低位で推移しています。一方、コロナショックではそれが功を奏し、金融危機にはこれまで至っていません。
ファイナンスの基礎知識をしっかり網羅的に学べる記事ですね。
経営者やマネジメント層であれば資金調達やIRでプロの投資家と渡り合うために必須知識ですし、そうではないビジネスパーソンにとっても自社の評価がどのようなロジックで行われているかを学ぶことは、経営視点を養うのにとても大切。
日本の社会人は投資リテラシーが低いとよく言われますが、投資やファイナンスの知識や教養をしっかり学ぶことも大切。
このようなコンテンツは社員教育にも適していますね。
全てのビジネスパーソンが教養として修得するのにお薦めです。
弊社でもビジネスサイド、特にコーポレートのメンバーに推薦しています。
EV/SalesやPSRマルチプルに関してですが、私が投資銀行時代にグロース銘柄のValuaiton、エクイティストーリーを提案していた時の実体験では以下の感覚です。
赤字企業のValuaiton=Salesマルチプルというより、対象企業のTAMや競合環境、ポジショニングからノーマライズされる時間軸、その時のコスト構造、利益率から算定されうる事業計画の利益に基づくFY●のPER(EV/EBITDA含む)がベースとなって算定されたValuationを、インプライドSalesマルチプルで割高/割安とクロスチェックしていくスタンスの投資家が多かったです。株式投資家の立場からすれば当然とも言えます。
森さんも言及されていますが、発行体マネジメントは上記考え方を考慮して投資家との対話に臨むのが真摯な姿勢ですね。
ファイナンスやバリュエーションを学んだ中級者ほど、「DCF法って言ったって、キャッシュフロー計画やWACCの設定の仕方次第で価値をなんとでも算出できるじゃないか。つまりガバガバな算定方法だから、DCF法での価値算定なんて意味ないね(笑)」と小馬鹿にするものです。
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“中級者”との指摘が言いえて妙です。
それを超えると一周回って、どうとでもなる一つづつの変数にどういう意図を持たせるか、その変数同士の相関に齟齬はないかということを考え始めます。
事業者側の事業計画もこの数多くある変数の積み重ねだと思います。株式のリサーチアナリストが提示する株価に本質的な意味がないように、計画数値自体よりも、それをどう積み上げてきたかのそれぞれの変数こそIRで議論したい論点です。
もう遅いやもですが、このあたりの市場との対話、開示に対する考え方も、どこかで発信していただけると嬉しいです。
過去ではなく未来の情報なので、どういう金額なら合理的に算定されたものとして監査法人に説明できるか、という制約が伴うので、かなり大変でした。
社内向けの説明ならまだしも外部の方を納得させる前提条件を積み上げるのは大変です。
リースや長期売買契約のついているプロジェクトものはFCFがある程度精緻に出せるので、プロジェクトの買収にはDCFが重要です。
銀行の買収をしていた時に思ったことは、結局は経営陣や人的リソースなどの目に見えない「生」の部分の評価が一番難しく、これが会社の価値という観点からも大事です。
これがベストという手法はなく、ケースに応じて、ストーリーを説明しやすい手法を組み合わせるということだと思います。
・DCFとマルチプルはどちらかではなく両方使う
・DCFの中の想定する最終年度以降の将来価値の算定にはマルチプル法を使うこともある
・マルチプルもいくつかの種類を使う(EBITDA・EBIT・Sales・その他)
・マルチプル法で参照する企業群もいくつか用意する(同業、競合といっても様々いる)
・複数のシナリオを用意して算定価値の変動幅を出す
総合商社の事業は多岐に渡りすぎていて、価値算定はかなり難しいというか、外部の人間はおろか内部の人間にも出来ないのではないかという気がします。ただ、PBRが1.0以下ということは、「会社を解散して資産を全て売却した方が将来キャッシュフローよりも儲かる」という市場からのメッセージとも言えます。色んな事業・アセットを持っていることでリスク分散を働かせられるという話はあるものの、それは投資家が自分で色んなアセットに投資すれば達成出来るもので、事業会社の中でやる必要は無いとも言えます。