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新型コロナの治療薬は、世界中の大学や医療機関、企業、スタートアップが血眼になって探しています。そのため連日、あの薬が効いた、効かなかった、あのテクノロジーが有望だというニュースが飛び交っています。
実際にトランプ大統領にもお気に入りの薬(レムデシビル)があり、「神さまからの贈り物だ。ゲームチェンジャーになる」などと、わかりやすくTweetをしている訳です。そして直後に、権威ある医師から軽率だとツッコまれています。
NewsPicksは、毎日のように生み出される学術論文(アカデミック・ペイパー)に注目。1年間で140万本ともいわれる論文から、未来を見通すためのヒントになる、注目の論文をピックアップ。だれもが楽しんで読める、新しいコンテンツ企画「ペイパーピックス」として発信します。
各報道やSNSの投稿を見ていると、論文の内容のほんの一部が切り取られ、拡散する過程でさらにその内容が歪められ、もはや全く別ものではないかと思うような形で伝えられているのを目にすることがあります。さながらウィルスが変異しながら伝播していくかのようです。これは、時にウィルスより危険ではないかとも感じます。
このPaperpicksでは、その根幹に戻り、何が分かっていて何が分かっていないのかを記すようにしました。報道から誤解されていることもあったかもしれません。記事を読み、いま一度何を論文が伝えたのか、ご確認いただく助けになればと思います。
いろんな研究が出ているようです。これは科学ジャーナリズムの世界では有名な毎日新聞の青野由利記者がコラムに紹介した研究です。最初は「フェイクニュース」と思ったそうです。もっともまだ科学的に証明されたわけではありません。以下、引用します。
米ニューヨーク工科大医学・生物医科学部助教授のゴンザロ・オタズさんのチームが、そのものずばり「BCG接種政策と新型コロナの罹患(りかん)率・死亡率の低下との相関」という論文を先月アップしていた。
世界には、イタリア、米国、オランダのように全国民対象の定期接種を導入したことのない国がある。スペインやフランスのようにある時にやめた国もある。一方、日本やブラジル、中国などは古くから定期接種を実施している。
オタズさんらは世界のBCG接種事情を調べ、定期接種と新型コロナによる死亡率の低さには相関があると結論づけた。接種開始が早い方が死亡率が低い傾向も見られるという。
https://mainichi.jp/articles/20200404/ddm/002/070/040000c
もしそうだったら、少しは安心できます。ニューヨーク、イタリア、スペインの医療崩壊に心痛める日々なので。
この病気に対して、効果がありそうな何らかの薬を使った場合、「薬を投与した患者で、症状の改善がみられた」という風になるため、一見薬の効果があったように感じます。記事に紹介されているように、初期の段階ではこういった報告が相次ぎました。
そのバイアスを取り払うためにはランダム化比較試験が必要ですが、これまでの論文では、「十分な規模感」での、「質の高い」研究結果はまだ出てきていないという状況だと思います。アビガンを始め日本が貢献できることも多い分野であり、今後の成果に期待したいです。
論文が積みあがることの重要性がよくわかります。
新型コロナウィルスは、グローバリゼーションが進んだ社会によって拡散されたわけですが、新しい脅威に立ち向かう医学も、世界同時かつ相互補助的に進歩しているのですね。
米国内科専門医としての経験があって「無類の論文好き」である山田悠史医師の存在と、多くの論文を積み上げてくれる医師・研究者の存在が心強いです。
山田さんには、ミモレでも、新型コロナの「重症化スピード」と「タチの悪さ」について書いていただいています。
https://mi-mollet.com/articles/-/22791
治療に「患者の抗体」を利用するところまでいっているが、そこには問題点も。
「この論文が発表されたこともあり、血漿を使った実験的治療を、アメリカ政府がパンデミック対策のひとつとして条件付きで認めることにしました」
「今後は、いかにスケールできるかが焦点になります。何せ、回復患者からの献血だけでは量に限りがあります」
「現時点で、新型コロナの治療や予防をするアプローチ」
1. 既存薬を投与してみる
2. 新型コロナに有効な、新薬を開発する
3. ワクチンを開発する
さて本題です。
薬の有効性というのは単純には測れません。臨床試験のデザインも多種多様を同時には行えず、更に「統計的有意差」をもって証明されなければ、「本当に効く」とはされません。これは医学・統計学を発展させ、また痛い目を見てきた先人の叡智によるものです。
この「有効性」の証明にはいくつもの高いハードルがあります。例で説明すると、、、
「この薬投与したら回復した患者がいた!」(レムデシビル)
→1例だけでは語れません。たまたまかもしれません。他の要素が良かったかも?
「10人に投与したらみんな良くなった!」(血漿輸血)
→対照群(偽薬投与群・プラセボ)が設定されていないので、「もしや、薬を投与しなくても治ったのでは?」が不明
「20人中10人に投与したら10人みんな良くなった!」(アビガン・ヒドロキシクロロキン)
→対照群が無治療だと、医師が「この人は薬投与したから治るはず、、、と無意識に治療を頑張ってしまった」かもしれない
(対照群に投与した薬は別のもの=違いが治療者にわかってしまう状況でも同じ)
「偽薬設定までした!投与したら10人中8人良くなったけど、投与しなくても6人は良くなった」
→統計的にこの「2人」は誤差の範囲かもしれない。統計学的有意差が出る患者数を集めないと、誤差でないことは証明できない
更には患者を割り振る際にも、例えば片方は高齢者だらけ、片方は若者だらけ、などと(意図せずでも)ならない様にランダム割付が必要です。
この様なハードルを全て超えて結果を出すのはなかなか難しく、更には現在ロックダウンなども行われる中で研究まで並行するのは更なる難しさがあると思います。
故に、「これで治る!」というものはまだ見出せていないのです。
さらなる研究が待たれます。
日々新しい知見がでてきている中で、大変な作業だったと思います。山田先生に感謝申し上げます。
ワクチンも治療薬も待ち望まれますが、世界中の研究者たちが誠心誠意研究を続けて下さっています。
有効な方法が見つかったとしても実用化まではまだ時間かかりますし、
それまでの間耐えしのぐためにも、
一般市民1人ひとりが、
・しっかり手洗いする
・人と密に接する外出を控える
これを心がけるということに変わりはありません。
東京が医療崩壊しないためにも、本当に1人ひとりの心がけが大事です。
「みなさんにここで知っていただきたいのは、簡単には「この薬は有効だった」「この薬はダメだった」というように、シロクロと決着がつかない事実です。
こうした論文が何本も積み重なって、本当に有効な治療薬はどれなのか、初めて真実が見えてくるわけです。」
と言うのはすべてのことにいえますよね。
個人的には、世間を騒がせている結局マスクが有効なのか有効でないのかに関しても最新の動向を体系立てたまとめがあると嬉しいです。
このブログでも言及されていましたが、後ろ向き検証では有効性が示されているものの、今回の記事にあるようなきちんと前提条件を比較対象と揃えた前向き検証では有効性が示されていない(少なくとも予防効果と言う意味では)ようなものの。
WHOのスタンスも変わってきているようなので現状の整理ができるとありがたいです。
https://eetimes.jp/ee/articles/2003/25/news053_2.html
まず未知の病がでてきたときに、既に使われているものや研究されているものなど「オプションの数」が重要ということ。ここ数週間でいきなり開発されるのではなく、すでにあるものを使った検証からはじまり、またそこで出てきた結果から組み合わせや調整などをしていくアプローチじゃないと時間軸が長くなりすぎる。それで抑えられるとよいし、またこれまでの英知が試される。下記のNP編集部のウイルスについての記事も是非合わせて見ていただきたく、HIV(エイズ)が抗ウイルス薬の研究知見をためるのに役立っていて、今回も治療薬候補の一角にある。
二つ目は「効くのかという見方」。本当に専門的観点からの記載・コメントが助かる。こういうときだから藁にもすがりたいから「効いた」という情報に飛びつきがち。もちろん、可能性があることは素晴らしいことだし、希望は重要。ただ、検証は色々な角度が重要だし、ニュースのヘッドラインは意識しつつも専門家の方の知見に頼りたい。
ご自身のリスクが高まる中でも現場で治療に当たられている医師や看護師の皆様、また治療薬の研究開発や医療機器の開発・増産に当たられている皆様に、改めて感謝。
https://newspicks.com/news/4681922
元製薬会社で治験、臨床試験を担当していましたが、このスピード感での臨床試験開始は有り得ないぐらい早いです(最初の凹んだ文献。原文読んだらちゃんと院内の倫理委員会など通してるし、中国の臨床試験登録サイトにも登録済みだしちゃんとプロセス踏んでる!)。
1点、「実験」という言葉が所々に使われてますが、倫理的な対応・配慮もしているからこういった世界的なジャーナルに掲載されていると思うので、「試験」という言葉を使う方がミスリードが無いように思いました。