シュンペーターが語った本当の「イノベーション」
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非常に面白かったです。イノベーションの現れ方として、シュンペーターは下記の5つを挙げています。
1. 新しい財やサービス Product
2. 新しい生産方法 Process
3. 新しい販路の開拓 Market
4. 新しい原料や半製品の供給源 Supplier
5. 新しい組織のあり方 Organization
組織のあり方、これはコミュニケーションチャネルのデザインや、当たり前の醸成つまりカルチャー醸成も、イノベーションと強い関連性があるということでしょう。
また製造業をベースにこれらの理論が考えられた当時から産業が変化している今、原料を情報やデータに、販路をインターネットやメディアに、置き換えて考えることもできそうです。
注目のコメント
「うーん、そういうことはシュンペーターは言っていないですね」。取材の途中で瀬尾先生は何回かこう仰いました。次第に、自分がシュンペーターを「イノベーションの教祖」のように見立てて、役に立つご託宣がいただけるものと思っていたことに気付かされました。シュンペーターはあくまで理論家であり、政策論とは意識的に一線を画していました。
さらに思い至ったのは、普段から経済学者に対して、安易に「処方箋」を求めがちであることです。「なぜこうなっているのか」という分析にとどまらず、「では、どうすればいいか」という提言まで語るべきだというスタンスは、ケインズの路線に染まっているからかもしれません。
シュンペーターとケインズはライバルでしたが、シュンペーターの言う企業家精神と、ケインズのいう企業家の「アニマル・スピリット」には通じるところもあるように思います。シュンペーターがマルクスからビジョンを取り入れていたことといい、各人の思想のつながりも興味深いです。シュンペーターの略歴をみて、驚きました。36歳でオーストラリアの大蔵大臣に、そして38歳で銀行の頭取に就任していたとは。単なる理論家ではなかったのですね。
シュンペーターは、イノベーションには企業家よりも銀行家が重要と考えていたそうです。資金の供給元としての銀行家が。今その気概が銀行にあるのか。頑張って欲しいと思います。イノベーションとは「新結合」だ。だから今の時代それを結合する「コネクター」の役割が必要となる。イノベーションのためのPublic Relationsだ。それは既存の事業の枠組みに囚われない「情報」と「人脈」の幅を限りなく広げてConnecting the Dotsする役割だ。
一方、単に点だけを集めたからといってコネクターがイノベーションを起こすことができるわけではない。そこに欠かせないのは、目的となる「ビジョン」だ。ビジョンがあってはじめて、かき集めたDotsの間に、有効なシナプスが浮かび上がってくる。
ビジョンなき、目的なきオープンイノベーションは何も生まない。無価値だ。しかし、コネクターはビジョンも目的もなくてもいい。まず情報をかき集める質より量が先決だ。ビジョンを提示した上でコネクターのかき集めたDotsをConnectingするのがイノベーターの役割なのだ。
特に大企業において「オープンイノベーション」と標語のように掲げても、何も生まれないのは目的に左右されず自由に動き回るコネクターと、ビジョンを掲げ情熱的に執念を持って取り組むイノベーターの両者が不在だから。この2人がいる新規事業部門はとてつもなく強い組織となる。