【図解】「日本的企業」キリンの栄枯盛衰
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キリンが一強だった時代、温度や出荷時期など条件を揃えて目隠しテストをしてみると、一番おいしいとされるのは必ずしもキリンじゃない、というより、キリンが選ばれるのは稀だというのが通説でした。それなのに何故キリンが強いのか。その強さの秘密について、いろんなことが言われたものでした。
記事にある通り、ビール販売の主流だった飲食店に入れなかったキリンは、街の酒屋さんを通じて一般家庭に売っていた。飲食店重視のアサヒやサッポロに冷たくされて来た街の酒屋さんは、家庭消費が急速に伸び始めたころ、擦り寄るアサヒとサッポロを袖にして、キリンに肩入れしたと聞き及びます。飲食店の支払いは手形による後払いですが、日銭が入る酒屋さんからの代金回収は早く、酒税の納付時期との兼ね合いで、キリンの手元には設備投資に回す潤沢な資金が残ります。「公正取引委員会が独占禁止法に抵触している可能性を指摘」したのはそんな時期。この指摘に対して、自助努力で公正にシェアを高めた企業を独禁法で規制するのは是か非か、という議論が起きたと記憶しています。
笑い話みたいな話ですが、当時、キリンのビール瓶は“なで肩”で、アサヒとサッポロの瓶は“いかり肩”でした。ビールケースに入れて酒屋さんに置いた時、肩に埃が溜まり易いアサヒとサッポロのビールはキリンのビールより古く見えるのが消費者に嫌われる原因だ、なんて説までありました。
ただ一つはっきりしていたのは、キリンはトップブランドとして高いブランドロイヤリティーを持っていて、他ブランドからキリンに乗り換える消費者が、キリンから他ブランドに乗り換える消費者よりかなり高かったという事実です。「(私たち)どういうわけかキリンです」というコマーシャルが、味に自信のある他メーカーをどれほど悔しがらせたか。
キリンをトップから引き落とす唯一の方法は、何かでキリンを他社に追随させることだと各社が思っていたはずです。記憶が確かなら、サッポロのノン・アルコールビールが大成功したとき、キリンがあわや追随しかけたけれど、土壇場でサッポロが方向性を間違えて、ノン・アルコールビールそのものが失速し、キリンは追随を止めました。その後も紆余曲折あって、ついにスーパードライがキリンを追随させた。そこからキリンの苦労が始まった・・・古い昔を思い出させてくれる記事でした (^^)1970年代のキリンの販売量が世界で3位だと知ったときは、とても驚きました。
キリンとアサヒの戦略は対照的です。
1990年代、アサヒがそれなりに売れていた「生ビールZ」の製造を止めてまでスーパードライに集中していたとき、キリンは販促費を一番搾りに集中したかと思えば翌年はラガーと半々にするなど、一貫した戦略をとりませんでした。
また海外進出でも、アサヒが1兆円を越える巨額を投資してオーストラリアの最大手を買収したのに対し、キリンは1000〜3000億円程度の買収をちょこちょことしています。
強いリーダーシップによる思い切った決断が、キリンに必要なのかもしれません。新たに始めるヘルスサイエンスの領域で、キリンがどんな決断を重ねていくのか、注目しています。うーん、専門家から見たら違うのかもしれませんが、戦略がブレブレなのって後から論ですよね?
キリンが落ち目だから、その理由を見つけるのにその戦略が上がってるようにしか見えません。
ローゼンツワイグ氏の『なぜビジネス書は間違うのか?』にて、同様の指摘がありました。
イケてる時のシスコシステムズにおいて、
・優れたリーダーシップ
・挑戦を好む企業文化
などが評価されましたが、いざシスコが落ち目に差し掛かると
リーダーシップや企業文化は批判の的になりました。
これを「ハロー効果」といい、『目に見えるものなどから、そのもの全体を評価する効果』らしいです。
例えば財務情報が悪ければ、その企業はリーダーシップや企業文化にも問題がある(ように見える) 心理的効果だそうです。
例えば、本記事においても、「キリンは先駆けて海外戦略に出た」というのは、よく批判されるキリンの保守的文化とはかけ離れてるのではないでしょうか。
そう考えると、相関関係はあっても、因果関係はないかもしれません。
余談ですが、これを踏まえると、アサヒが落ち目に差し掛かった場合、ビール一点集中突破の戦略は批判されるでしょうね、今は伸びているので批判の対象にはなりませんが。
(追記)
もう一つですが、過去の歴史がブレブレ(に見える)だから一点集中に切り替えろ、というのは詭弁です。一度大きくなった企業を再度大きくするのはそんな簡単なプロセスじゃないでしょう。
どんな企業も一つの製品だけで何十年も成長はできません。キリンはこの10年、迷いながらも挑戦し続けているのだと思っています。