AIに「スペースシャトルに乗る犬」は描けない
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30年前はただの演算装置でしかなかった計算機が,「犬」を描くようになった.まさに「ゼロからイチ」.「スペースシャトルに乗る犬」を描くのは「10」くらいでしょうか.「ゼロからイチ」の進歩と「イチから10」の進歩はどちらが大きいのでしょうか.ビジネス界で好まれそうな話です.
以前,NHKスペシャル「終わらない人 宮崎駿」で,川上量生氏がドワンゴ人工知能研究所で創作した生き物のCGを宮崎監督に見せて,宮崎監督が激怒したシーンがありました.クリエイター宮崎駿が稚拙なAIが創造したCGに激怒したように見えますが,その実,宮崎監督は自分が創造できなかったものを見せられて気持ちが高ぶったのではないかと私は思いました.「オリジナリティ」や「クリエイティブ」に優劣の評価基準がないなら,人間のそれとAIのそれを比較する方が間違っている.AIはすでに人間と違った「オリジナリティ」「クリエイティブ」を獲得しているともいえる.
一方で,仮にそのような評価基準があったとする.AIの凄いところは,人間のそれを100点としたとき,80や90点の及第点の「オリジナリティ」「クリエイティブ」を人間よりも超高速で生み出すことができるところにあります.記事にある三本脚の犬や尻尾に穴の空いている犬を人間はどれだけの時間をかけて想像して描くことができるのでしょうか.AIはそれをどれだけの時間でやったのでしょうか.宮崎監督やスタジオジブリは数年に1本しか長編アニメ映画を公開できません.しかし,AIならそこそこの作品を毎日,あるいは毎秒,リアルタイムに1本公開することができる.人間には太刀打ちできない.記事の内容には概ね賛成ですが、
「しかし「スペースシャトルにいる犬」や「病院にいる犬」は、AIのクリエイティブにはありません。それは入力されるデータが足りないからです。」
については、zero-shot learningでスペースシャトルや病院という分散表現を与えたらいいのでは・・・?と自分がいま行っている研究から思いを馳せてみました。
下記は今月末発表のものですが、zero-shot learningといって見たことのない物体の画像修復を行うというもの。見たことがないのになぜできるのかというと、Wikipediaから概念的な情報を得て良いという前提です。例えば、キリンの顔画像を修復・生成させるとします。キリンは一度も見たことがない。けど、百科事典的な文書としてキリンがどういう動物なのかは知っているという状況です。完璧ではないけどある程度うまくいきます。
加藤尚輝, 山崎俊彦, “未知クラスに対する属性情報を用いた画像修復,” 画像工学研究会 (IE), 2020.人間にできて、AIにできないことは、ないもないでしょう。なぜなら、極論すれば脳の回路そのものを人工的につくっちゃえばいいのですから。
ただし、それぞれの機能が何年後に実現可能かには、大きな開きがある。あるものは来年にはできるだろうし、あるものは何万年もかかると思う。この記事はおそらく、向こう数十年のスケールの話をしているのだと思います。