「iPhoneをアメリカで作ったら一体いくらになる?」問題
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注目のコメント
トランプ大統領は、当選前から「iPhoneを米国で作らせる」ことを、製造業の米国化行きの象徴だとしてきました。しかし組み立て工程のみが米国にやってきても、薄給で繁忙期には長時間労働となる組み立て作業員が発生するだけで、それは果たして「米国への製造業回帰」と言えるか疑問です。Appleからすれば、組み立てコストが10倍ほどに跳ね上がるだけでなく、アジアに集中させたサプライチェーンの再編などで、割りに合わない投資を強いられることになります。それよりは、実際にAppleが行なっている「先端製造業ファンド」で、米国が強みを発揮できる分野に重点投資し、付加価値の高い製品を作る競争力と雇用を米国内で増やした方が、実利と言えます。
結論、世界向けの全部をアメリカに戻す戻さないという大げさな話ではなく、必要な一部ずつを政治との駆け引きをしながら進めて行くことでしょう。
ここで大事な概念は近年の製造業の「地産地消」化の流れ。FAとロボティクスの導入で工程における人力の割合が減り、また新興国の経済発展とグローバル化により工場労働者の所得レベルの差が縮まってきたため、製造コストのアビトラージを目的に新興国でモノ作りして運び直すより、消費地で作ったほうがサプライチェーンコストを考えるとメイクセンスという考え方。
ゆえにティムクックも中国で作るのは「安いからではない、勤勉だからだ」と言う。
むしろ問題は良くも悪くも超勤勉、いやブラック企業なフォックスコンが坂の上の雲な中国労働者に鞭打って出している歩留まりに、アメリカ人はどの程度追いつけるのだろうか。何回かコメントしてきたこの話題。
アメリカで作ることを目指してるといくらトランプが言っても結局そうはならずに関税回避のためにEMSの組立工程の脱中国だけが急速に進む。想像以上にスピードが早い。
結果的には中国のサプライチェーンに影響は出るわけで、そういう意味ではこれは結果論だが、米中の闘い的にはアメリカとしては中国の国力を削ぐことができるので、本当に生産が戻ってこなくてもオッケーはオッケーな気がする。