レバノンのデモ、490人超負傷 最悪規模、首都で治安部隊と衝突
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デモの当初の要求であった「通信アプリへの課税」はずいぶん前に撤回されています。
問題はもはやそんなところではなく、レバノンという国のあり方が問題になっています。背景には、シリア内戦と連動しながら長期化する通貨の下落と経済の低迷があります。
デモの側には主だった組織や指導者はありません。というより、レバノンをこれまで牛耳ってきた、各宗派(キリスト教、スンナ派、シーア派)の特権層と各宗派を代表する政党による権力分立の解体、が主な要求です。ちなみに、カルロス・ゴーン氏はレバノンだと宗派的にはキリスト教特権層(政党でいうと自由愛国運動)に入れられます。
そのような権力分立が機能しない、特権層の間で利権の分配ばかりで、国民全体の利益になる効率的な経済開発ができない、というのが問題視されています。たとえば、ゴミ処理すらろくにできずに、道路にゴミが溢れかえるようなことになりました。宗派ボスの利権には直接関係しないからです。
このデモには、シーア派の政党、つまりイランに補給を受けているヒズブッラーは参加していません。彼らは現体制から利益を受ける側であり、シリア内戦においてアサド政権を支援するためには現体制が都合がいいからです。
この状況は、イラクでより長い間続いていて、はるかに多くの死傷者と激しい衝突を起こしている抗議行動とよく似ています。宗派ボスによる利権配分と機能しない政府への反発、イランに支援されているシーア派党派は抗議行動には参加していないことも同じです。
今後、レバノンでもイラクでも、シーア派の武装組織がデモを武力で制圧しようとすると内戦のリスクが高まります。イランの故スライマーニー司令官は、両国のシーア派武装勢力に、そのような武力弾圧を始めるよう叱咤していました。昨年10月のWhatsAppへの課税に対する抗議から始まったレバノンのデモは、その後腐敗したレバノンの政治への批判そのものにつながり、今なお拡大を続けています。
元来モザイク国家であるレバノンは各宗派ごとに権力を分散し、その割合を固定することで国家を安定させることを国是としてきました。
しかしその結果その割り当てを牛耳る既得権者に異常な権力と経済力が集まることになり、遂に1%の富裕層がGDPの25%を生み出すという極めて歪な国家になってしまいました。
こうして経済格差が極端に開く一方、政治の安定に不安を抱く市民の預金引き出しが加速し、金融危機が勃発。
この為今月に入りレバノンの金融機関は連鎖的に極端な預金の引き出し制限、送金制限をかけざるを得なくなり、この結果自分のお金を引き下ろせなくなった一部の市民が怒って銀行を襲撃、今回の大規模暴動につながりました。
レバノンの経済成長率はこの1年で-2%近くに下がり、経済恐慌の状況を呈しつつあります。
今後市民の不満の矛先が国の富を独占してきた権力者や富裕層に向かうことは十分考えられます。
直接関係ないですがさすがのゴーン氏も日本とレバノンの差を知ることになるかもしれませんね。レバノンのデモがどんどん過激になってきている。政治家の腐敗、失業率の高まり、そこにWhatsAppのメッセージに対する課税がキッカケにデモが始まり、ハリリ首相の退陣に。正直ゴーンに対する批判は高まっても共感は得にくい状況だと思うな。腐敗した金持ちの象徴にすらなりかねない。日本政府にとってはラッキー