臨床試験後に電柱から飛び降り死亡 薬投与が原因か
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基礎実験で病気に効果が認められそうだと期待を持たれる化合物は、まず動物実験で人に投与してもおおよそ安全だろうということが確認されます。安全性の確認後、副作用の被害を最小限度で抑えられると仮定できる少数の健常人に薬剤投与を行い、副作用がないかを確認します。これを第一相臨床試験と呼びます。
第一相試験で安全性が確認された化合物は、少数の患者さんを対象に安全性と最適な投与量を確認する第二相試験、一定数の患者さんを対象に行い主に有効性を確認する第三相試験を経て、薬剤として世の中に出てきます。
今回の事故は、このうち、初めて人間に投与を行う第一相試験の間に起こっているようです。リスクはつきものですが、因果関係があれば、最悪の事態が生じたということになります。
今後は、因果関係の検証にとどまらず、臨床試験中の観察のプロセスや設計に問題がなかったかなど、再発を予防するために、システムエラーの有無の検証と介入が必要です。臨床試験には第Ⅰ相から第Ⅳ相まであり、今回は被験薬の安全性を見るために男性の健常人を対象とした第Ⅰ相試験で起こった事象です。
抗がん剤の場合は第Ⅰ相から実際に患者を対象とするのですが、それ以外の治験において第Ⅰ相試験で被験者が亡くなる例はあまりなく、今回の事例は本当に悲しい出来事です。
ご冥福をお祈りします。
起こった事象と被験薬との因果関係が否定できない場合は「副作用」として分類されます。
しかし、今回は被験薬を服用することによる自殺を図る可能性があるリスクについて医師から文書による説明がなされていなかったとのこと。
治験を行う上での法律であるGCPには「治験に関して文書による十分な説明が必須」という旨の記載があるので、今回は医療機関側の対応にも問題があると考えられます。これが防ぎうる事態だったのかどうかの検証がすごく大事。
臨床試験との因果関係があるのであれば、そして防ぎうることなのであれば、全力で再発防止に取り組んで、業界全体にフィードバックしてもらいたい。