【ビジュアル解説】もう一度、「iPS細胞」のすごさを知ろう。
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注目のコメント
昨日の記事では、センセーショナルな内容に驚かれた方も多いかと思います。
様々なコメントを読ませていただき、誕生から12年経ったiPS細胞について、新しい視点で見る良い機会となりました。
【ドキュメント】日本のiPS細胞は、なぜガラパゴス化したのか?
https://newspicks.com/news/4406530
一方で、この特集前のわたしは、そもそもiPSが何だったのかうろ覚えというどうしようもない状態でした。そんな自分でも読めるように、今日の記事では少しトーンを変えて「中学生でもわかるiPS細胞」というところを目指してつくりました。
iPS細胞の誕生の衝撃とは何だったのか、山中さんが注力するiPS細胞ストック事業や、日本の再生医療の現状など、盛りだくさん、完全ビジュアル解説でお届けします。昨日の記事もそうだけど、山中先生の発想を疑問視する展開には違和感があります。
研究者なら、自分の発見したものを推し進めたいのはある程度仕方ないことです。大切なことは、それを客観的に見たときに、特に多額の税金を使って推し進めるべきものか、という判断です。
今日の記事の前半にあるように、iPS細胞はゲノム編集がない時代で病態解明や創薬スクリーニングに大きく貢献しています。そのため、カバー画像にある副題「iPSの失敗」は明らかにミスリードです。
問題となっているのはiPS細胞そのものではなく、iPS細胞を日本の戦略としてどう位置付けるのかという戦略です。その意味で、副題は「iPS戦略の岐路」あたりが適切です。そうすれば、ストック事業推進派の意見がもっと聞けたのに、と思います。
なんでもかんでも成功(すごい)と失敗(転落)と二分化して考えるのがNPの悪い癖です。世の中そんなにシンプルではありません。ちょっとかわいい。
iPS細胞のインパクトを何であるか大変わかりやすいコンテンツでした。引用している論文と、予算のリファレンスに関してコメントしたいことがありますが、今回はトーンを合わせて科学的なコンテンツを補足させていただきます。
ES細胞にはこれから個体になるところ(胚)の細胞の一部なので、ポテンシャル(多能性:プルリポテンシー)があるのは理解できると思います。
でも精子と卵子が出会って受精卵になったら、また何にでもなる細胞ができるんですよ。考えたら不思議ではないですか。でもどうやって?ここが根本的な問でした。
NP向けに表現を試みると、人間が「個体」として存続するためには、光の情報を受ける「目」であったり、外界と境界を作り温度調節をする「皮膚」であったり、まさに「組織」をつくって一つの会社(個体)を維持しています。
でも人事部の人が、いや私は経営がやりたかったと言って勝手に好きなことしていたら存続できません。皮膚を怪我した後にそこから気まぐれに「目」とかできてきたら困るのです。
そこで、個体発生が始まったときから、DNAや染色体構成に関わるタンパク質に化学的な修飾(マーク)をしていって、細胞それぞれの運命を導いて(誘導)専門性を高めていきます。(この研究分野はエピジェネティクスといいます)しかもかなり厳格に規定して他の仕事はさせません。(後戻りさせません)
それを受精というイベントなしに、4つの遺伝子を外から入れるだけで起こしたのが
induced Pluripotent Stem cell
多能性を誘導した幹細胞
です。ES細胞というツールがなければこの発見はありませんでした。記事中にある4つの遺伝子を見つけるためにES細胞と普通の分化した細胞を比べて、卵に近いES細胞にだけ特別にたくさん働いている遺伝子を絞り込んでいったのです。はじめは24個でした。そして最後には4つまで絞っても初期化できることを報告したのです。
Takahashi K, Yamanaka S. (2006).
“Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors”. Cell 126: 663-676.