【3分解説】電子タバコで死者続出、米国で何が起きているのか
コメント
注目のコメント
いわゆる「電子タバコ」には電子タバコと加熱式タバコの2種類があります。
1.電子タバコ:リキッドを加熱してエアロゾルを発生させて吸引するタイプ。リキッドには、ニコチンを含むものと含まないものの 2 種類があります。海外ではニコチン入りリキッドが販売されている一方で、日本では、医薬品医療機器法による規制により、ニコチン入りリキッドは販売されていません。
2.加熱式タバコ:葉タバコを直接加熱し、ニコチンを含むエアロゾル吸引するタイプ(商品名 iQOS, glo)と、低温で霧化する有機溶剤からエアロゾルを発生させた後、タバコ粉末を通過させて、タバコ成分を吸引するタイプで、電子タバコに類似した仕組みのもの(商品名 Ploom TECH)の2種類があります。
日本人としては、アイコスなどの加熱式タバコの健康の影響がどうかというところが気になると思います。加熱式タバコの主流煙中には、従来の燃焼式タバコに比べてタールが削減されていますが、ほぼ同じレベルのニコチンや揮発性化合物(ホルムアルデヒドなど)、約 3 倍のアセナフテン(多芳香環炭化水素物)等の有害物質が含まれています。受動喫煙の影響については、科学的証拠を得るのにはかなりの時間を要するため結論は出ていませんが、見えにくいエアロゾルの中には有害物質があるため、「受動喫煙者の健康を脅かす可能性があると考えることが合理的である」とWHOは発表しています。
「煙が出ない、煙が見えにくい」というところからクリーンなイメージがあるかもしれませんが、加熱式タバコの健康への悪影響については、現時点では燃焼式タバコと同等と考えておいた方が良いでしょう。今でこそ、若者のニコチン中毒の温床になってしまっていますが、電子たばこの当初の主な用いられ方は、従来のたばこからの”step down”でした。
今でこそ、ニコチンのみでなく、大麻が含有されたり、8000種類以上のフレーバー成分が配合され、もはや「たばこ」と呼んでいいのかわからないプロダクトになっていますが、当初はニコチンにミントの香りを加えるといったシンプルなものでした。
この過去のプロダクトによる「禁煙治療」は医学の四大雑誌、NEJMにも報告され、安全かつ有効に禁煙に導く治療になりうるとして、禁煙治療の一手法として確立されつつありました。私も米国で医師として勤務していた時代に、自分の患者さんが少しずつ電子たばこに置換され、最終的に「卒業」できるのを目にし、電子たばこの恩恵に預かっていたものです。
このような背景もあることが、英国のとられている立場につながっており、ニューヨーク州やミシガン州が「完全」禁止法を準備できなかった要因にもなっています。
ニコチン依存の拡大を防ぐべく販売を禁じるのは良いとして、では、すでに電子たばこが生んでしまったニコチン依存患者をどのようにニコチンフリーに導くのか、より有効で安全な禁煙治療は準備できるのか。電子たばこの禁止とともに、そのようなことについても考える必要があります。
また、オンラインの時代なので、米国の一部の州で禁止法が施行されても、ユーザーは、世界各国からより魅力的で安価なプロダクトを探し簡単に入手できてしまうでしょう。本当に問題視するならば、世界各国が集まって協議し、方向性を決定していく必要がありそうです。日本でも繁華街で看板を見かけるようになった「VAPE」ですが世界で4000万人以上の電子たばこ利用の多数を占めており巨大な市場となっています。
アメリカでは粗悪品や大麻成分入り製品の使用が原因と見られる死者の続出、未成年の利用増加といった問題が起きており、トランプ大統領も一部製品を禁止すべきと言っています。
今回の記事では、そうした「Vapingクライシス」の状況や大手たばこ企業との関連について紹介しています。