iPS使い皮膚老化解明へ 京大とディオール共同研究
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私たちの身体を覆う皮膚は、その深層にある真皮、皮下組織との絶え間ないコミュニケーションによって維持されており、そのような個体としてのダイナミクスを捉えなければ、皮膚の生態の全体像は捉えられません。
すなわち、実際の皮膚の加齢や再生のメカニズムは、iPS細胞を用いた観察結果とは大きく異なる可能性がある、ということです。
それでもなお、細胞レベルでの観察が一定の知見を与えることには疑いはなく、研究を行う価値はもちろんあります。
しかし、基礎レベルの研究と自社製品の販売促進を狙う企業とが強力にタイアップすることは、研究結果の不適切な解釈や、個体に適応するには未熟な「エビデンス」を振りかざした不適切な販促に繋がるリスクを内包しており、今後の動向には注意も必要です。国内でも花王や資生堂などの大手は細胞・分子生物学的な手法で皮膚などの知見を集めています。化粧品やシャンプーにおいても生命科学が必須となりつつあります。
皮脂中に人のRNAが存在することを発見
独自の解析技術「RNA Monitoring(RNAモニタリング)」を開発
https://www.kao.com/jp/corporate/news/2019/20190604-001/
資生堂の毛髪再生研究
https://www.shiseidogroup.jp/rd/development/medicalcare.html写真のお二人は存じ上げていますが、こちらの共同研究の話は全く知りませんでした。ウォルツェン研はピギーバック・トランスポゾン法による遺伝子改変法を得意としていて、研究所内でも彼の作ったピギーバック法をコラボレーションで使わせてもらっているラボもあります。昨今はよく話題に上がる遺伝子編集技術であるCRISPR-Cas9法もやっていますが、ピギーバック法ならではの利点もあります。こういったツールと技術に長けたチームが所内にあると大変助かります。
今回は、皮膚の老化モデルをiPS細胞の分化方法と共に提供して、共同研究すると見られます。
プレスの研究発表内容からは、基礎研究よりの共同研究で、ビジネスに直結させてプロダクトを出そうというには見えませんので、老化モデルの提供によって面白いことがわかれば良いですね。
海外にしてみればES細胞だって主流にありますから、高齢の健常人から作るモデルという点に意味を見出している研究になると思います。
ウォルツェン先生は初めての海外からのPI(主任研究者)で、今回の海外の化粧品会社との初の共同研究も彼のネットワークを生かしたものではないかと推察します。