「調達額の大小は本質ではない」急成長ベンチャーに学ぶファイナンスと事業のバランス
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「スタートアップ新時代」戦略シリーズ第6弾のテーマは、「資金調達」の成長フェーズである「シリーズB」です。
まだまだ明るみに出ることが少ないベンチャーの資金調達の内実について、各社率直にお話しいただき、貴重な内容になっているかと思います。
特にSmartHRさんのOKRが科学されつつあるSaaSビジネスだからこその、事業とファイナンスの理想的な整合性は、目を見張る思いでした。
スマートに見えますが、なかなかできることではないと思います。
ちなみに過去の人気戦略シリーズはこちら連載ページからどうぞ。
https://newspicks.com/user/3302?ref=news-summary_4172713「ベンチャーの資金調達はシリーズBが最も難しい」という一節は、このTomasz Tunguzのブログポストが起源と思う。
https://tomtunguz.com/challenges-of-the-series-b/
2017年5月にこの記事を引用してFacebookにポストした内容を以下に再掲します。
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ベンチャーの資金調達はシリーズBが一番難しい。
シード期は創業者チームと彼らが描く夢への投資。シリーズAは初期のプロダクトと少ないデータを基にした、将来の急速な成長仮説への投資。
シリーズBでこの成長仮説が正しかったか間違ってたか、完全にクリアになる会社は少ない。大抵のベンチャーはこの間のどこかにあって、明るい材料と悲観的なデータが混在している。数字や実績だけで資金調達もできない一方、チームと夢だけで投資家を説得できる規模ではない。このキャズムを超えられるかどうか、両方に足を突っ込んでいる曖昧な状態。
ゆえに投資家へのピッチでも、社員の採用でも、メディアのインタビューでも、「なぜ将来の成長が不可避なのか」を自信に満ちた説得力のあるストーリーで語れるかどうか、がシリーズB調達のポイント、というTomasz Tonguzのポスト。
楽な資金調達など無いが、シリーズB調達は日本では別の意味でも難しい。規模的に投資できるVCは圧倒的に少ない上、M&Aの可能性はかなり限定される。マザーズへの小規模IPOでは足りないため、ある程度スケールする必要がある。
とはいえ日本のベンチャーエコシステムに足りない要素の一つがシリーズB以降のグロース投資なので、このキャズム超えに挑戦するベンチャーがもっと増えて欲しいし、ここの成長を支えるリスク資本や投資家層も厚くなる必要がある。こういう特集があるたびに、ラウンド毎のバリュエーションと希薄化割合も出してほしいと思います。登記簿をみれば、さほど手間のかかることでもないので。
たとえば50億円調達にしても、メルカリがラストラウンドで2%放出(VAL2,500億円)するのと、スタートアップが30%程度放出するのではまったく意味が異なります。
その意味でも、調達額そのものには意味がなく、また、最終的な投資家のexitバリューからIRRなどの資本コストを計算すれば、事後的にそのラウンドが割高だったか割安だったかも判定できるわけです。
exitは常にお祝いごとなのであまり振り返りがなされませんが、IPO後の株価低迷やM&A後の減損などが散発している現状を鑑みると、後に続く起業家たちのためにも、資本政策の情報は(登記情報ということもあり)大部分公開してもよいのではと思う次第です。