コラム:「アップルケア」でジャパンディスプレイが得た保証
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JDIはお金が無い。有機EL技術でも三星に追いついていない。G6ハーフサイズでの蒸着やレーザーリフトオフなど簡単ではない技術がいくつもある。
三星は過去からの積み重ねによっていつのまにか競争優位を築いた状態から外販を再開した。ガラス有機ELを安く販売することで一気にシェアを取り戻し、プラスチック有機ELも段階的に外販した。
この外販によって中国スマホメーカーは有機ELという新規要素を手に入れ、アップルもまたその恩恵を受けた。
JDIは逆に投資が出来てこなかったので、有機EL化に乗り遅れている。
Appleからすると三星一社でも賄いきれてしまう有機ELパネルだが、三星一社から買い続けると売り手市場になってしまうため、これまでの液晶パネルで築いてきた驚愕のサプライチェーンマネジメントを行うことがおそらく今日時点でも出来ていないと予測される。
有機ELパネルを買うことを決めてから4年近くが経ち、買い始めてからでも2年近くが経つが、なかなかアナログな技術、クローズドなノウハウをバラバラに分解することが出来ていない。それくらい三星の情報管理がしっかりしているということでもある。三星の社屋に入るためにはパソコンも情報端末も持ち込めないという話はよく聞く。
JDIは世の中の有機EL化の流れに明らかに乗り遅れたが、今年からはApple Watch向けにもパネルの販売を始めると言われている。しかし、Apple WatchとiPhoneではサイズも規模も異なるため、製造の難易度も大きく違う。iPhoneサイズのサンプルはすでに数年前から何度もSIDでは展示されているが、それがなかなか採用に至らないのはJDIが有機ELの前工程に投資が出来ておらず、量産の実績が無いからだと思われる。鶏と卵の世界になるが、JDIは投資してくれたら量産する、と言うだろうし、AppleからすればJDIがまずは量産してくれないとどうして安定して作れると言えるのか?という懐疑的な状態だろう。
Appleはお金を出すときには1000億円でも2000億円でもいくらでも出すだろうがそれはあくまでも「proven technology」に対してであって、先行投資のようなマネはあまりするつもりが無いということでもあるのだろう。アップルがJDIの再建のために救いの手を差し伸べたという話で、6月28日に既報だと思います。
アップルケアというものの、アップルと取引が深かったシャープであれ当社であれ、アップルが儲けさせてくれる訳ではありませんし、まして借入返済をリスケしてもらう中での出資ですから、従来よりも厳しい取引条件を突きつけるのではないかと思います。アップルは小型液晶を使うデバイスをまだ拡販する予定があるのかもきになるところ。
ところで、今回INCJからの負債はJOLED株に譲渡による代物弁済になりますが、そのJOLED側が資金調達と量産を進めるのか、こちらの進捗も気になります。個人的には「保証」にはならないと思っている。サファイアガラス作っていたGT Advancedが一番の事例だが出資までしていても結局破綻した。
JOLED側は塗布、JDIは蒸着式の有機ELを進める中で、Appleとしてはサプライヤーは増やしたい。ただその考えがあっても、兎にも角にも投資と研究開発が必要な領域で、先立つ資金がない。資金があるところでもずっと研究していてできないなかで、量産をできるところまで(特にスマホサイズで)もっていけるのか。
まだXR含めて液晶モデルがEOLとなっていないなかで、一旦はお金を出したというのが実情ではないだろうか?